第2章 28話 降ってきた黒曜石の光①

 え? なんで?


 離宮では、呪いは封じられるはずなのに。


 アイリーナはあわてて椅子の背をつかんで、闇に備えることにした。


 だが、なぜか脚が動かなかった。

 何度力を入れても、ぴくりともしない。まるで神経な切れてしまったようだ。


 アイリーナは目が見えていることに気づいた。今度は目は見える。その代わり脚が動かない。


 アイリーナは石畳にへたり込んだ。


 なんで?


 わけが分からない。なんだか不気味で、体が震えた。


「あ、あの、シーファウ王子」


 思わず名前を呼ぶが、周りには誰もいない。耳が痛くなるくらい静まり返っていた。


 みかんが心配気にひざの上に乗った。


「ありがとう、みかん。わたしおかしいよ、どうしたよう」


 みかんが不安気にうろつく。

 いつものようにみかんを抱っこしたいのにできない。


 じっと動かないアイリーナの前方にある木に、リスが登ってくる。


 どんぐりを手渡ししたい。だが、腕が届かなかった。


 時間が経ち、呪いが消えるのを待った。だが、いくら経っても今までのように効力は切れない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る