第2章 26話 急な使者①

「シーファウさま」


 小さな声で、サフが彼を呼んだ。

彼は階段をあがってくるところだった。いつの間にか、下の階に行っていたらしい。


 サフは気まずそうな顔をしている。


「どうした? サフ」


「それが、今、使者が来まして……」


 苦々しい表情に、シーファウの顔も曇る。


「こんな時間に? 緊急の要件かな。なんだろう。おかしなことじゃないといいけど」


「せっかくの憩いの時間に申し訳ございません、

時間を改めるようにお願いしたのですが」


「アイ。ちょっとここで待っててね」


 使者?


 アイリーナは、庭の向こうの門に視線を向けた。高い鉄扉の門の前には、門番が二人立っている。


 門を開ける音なんてしたっけ? 離宮に誰か来た?


 訪問者が来れば、いろいろなの聞こえる、馬車夜蹄の音。人の足音。


 門番とのやり取り聞こえなかった。


「すぐもどるよ」


 シーファウが立ち上がる。すると、驚いたリスたちは木陰に隠れた。


 それきり、姿を見せない。リスたちは、見慣れたシーファウのことしか、信用しないのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る