第2章 25話 聖獣の夢と呪い②

「あ、ああ、そうだよ。呪いが本当に嫌になった夜、夢に聖獣さまが出てきて、アイの屋敷の近くのあの森に、俺を誘なったんだ」


 夢での誘い……。


「それで、あの日の朝、試しに森に行ってみたんだよ。本当に呪いが解けるとは思わなかった」


 ……解けたんじゃないか。アイリーナに移ったんたからな。

 フォローはするよ、と、シーファウは苦笑いした。


 じゃあ、聖獣さまが呪いをわたしに移したってこと?


「ううん、きっと違う」


 きっと、そうじゃない。聖獣さまはそんなひどいことはしない。


 だったら、どういうことだろう。


 聖獣さまは、シーファウ王子を呪いから救ったのかもしれない。


 だったら、いつかはわたしだって呪いから救ってくれるだろう。


 シーファウ王子は、呪いは王族が力を尽くしても解けなかったといっていた。


 でも、聖獣さまなら答えを知っているかもしれない。


 もしかしたら、呪いを解く鍵は聖獣さまかもしれない。


 シーファウ王子は聖獣さまと呪いの関係は調べたんだろうか。

 まだなら、わたしが調べるのもいいかもしれない。


 わたしもがんはろうと、アイリーナは手を握った。


 せっかく異世界にきて、夢だった獣医に手が届きそうなんだ。全力でがんばらないといけない。


 そして、みかんとずっと平和に暮らすのだ。


 前世ではできなかったから、今度こそ。


 そんなアイリーナを、みかんがじっと見ていた。前足でアイリーナの頬をチョンと押す。


 これは、『それは考えない約束』の合図だった。


 ……前世で、アイリーナはみかんを巻き添えにした。エリートの一家に生まれたアイリーナだったが、アイリーナだけがなにをしてもだめだった。


 両親とケンカをして家を飛び出したとき、みかんが追いかけてきてくれた。

 でも、みかんは車道に飛びだした。


 アイリーナはみかんを抱きかかえたのに、護りきれなかった。そして、転生して、この異世界で巡り合った。


 『いいの』と、みかんは前足でチョンチョンする。


 いいの、今が幸せだから。


「うん、みかん。この異世界を楽しもう」


 アイリーナはみかんにだけ、そっとささやいた。


 

 

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