第2章 18話 三日目の朝に①

 さわさわと、風が木々の葉を揺らす音がする。


 鳥たちかはしゃぐ声がする。

 布団の中でじっとして、アイリーナは耳を澄ませていた。


 目はとっくに覚めているが、起きる気になれない。自然をいっぱい感じるこの音が愛しい。


「ねえ、みかん。平和だねー」


 今日のみかんはアイリーナの布団に潜り込んでいる。


 だからアイリーナも布団をかぶり、みかんと向かい合って寝る。


 平和だねー。アイリーナがいうと。


 和む。みかんが答える。


 離宮に来て三日、この森の音は本当に好きだった。


 ふいに、となりの部屋のドアがノックされた。シーファウの私室のドアだ。


「シーファウさま、おはようございます。朝早く申し訳ございません。手紙が届いたので、お持ちしました」


「こんな時間に、めずらしいね。誰?」


「ビスター伯爵令息です。先程、直接お持ちになったそうで」


 兄さまっ。


 アイリーナは飛び起きる。

 わざわざ来てくれたんだ。こんなところまで。


 追いかけたいが、離宮の外には出られない。


「レンバードは熱心だね」


「アイリーナさまのことが心配なのでしょう。気持ちは分かります」


 シーファウは答えない。


 その代わり、ボンっという大きな音がした。あれは、シーファウが力任せに手紙をゴミ箱にほおり込んだ音だ。


 レンバードの交渉はまた失敗だ。

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