第2章 17話 シーファウの歪んだ幸せ②

「これは先日、子爵夫人から頂いたクッキーなんだ。アイにおすそ分けだよ」


 花模様のきれいなナプキンだった。


「いいんですか? ありがとうございます」


 だが、リボンを解こうとした途端、シーファウは包みを引ったくった。


「ごめん、間違った」


 焦った表情でいるが、どこかうれしそうだ。


「これは前に俺に届いた毒入り菓子だった」


「え?」


 毒?


 アイリーナは椅子ごと後ずさる。

 みかんをぎゅっと抱きしめた。


「ねえ、アイ。アイはみかんが間違えて毒を食べそうになったらどうするの?」


「え? ……無事でよかったって抱っこでしょうか」


「そうなんだ? ……無事でよかったよ、アイ。抱っこは憚れるから、こっちね」


 シーファウはアイリーナの頭を撫でた。


「だいじょうぶだよ。俺が護ってあげるからね」


 護る。またその言葉が出た。あれは冗談じゃなかったの?


 ……ねえ、サフさん。これが、本当に深窓の王子なんですか?


 わたしを気に入っているんですか?


 アイリーナはサフに目で問う。彼はサッと目をそらした。

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