第2章 12話 聖獣とシーファウ②

「聖獣さまは、夢の中でも森にいて、いつも泉の中に立っている。水を浄化するところも見せてもらったよ」


「うらやましいですっ」


「あの朝……。俺がアイリーナの家の近くの森に行ったのもね、聖獣さまが夢であの森に行くようにお告げくれたからなんだ」


 ……え?


 わたしとシーファウ王子が逢ったのは、聖獣さまのお告げが原因?


 あのときのことが思い出される。


 異世界の森で、聖獣さまがくれた物語。すごく、ふしぎな童話を見ているような気持ちになった。


「ねえ、聖獣さまのこと詳しく知りたいです」


「そうだな。真っ白でそれはそれは、美しい姿なんだよ。額に水晶のような長い角が一本。清らかさを現しているような純白の被毛……」


 相変わらず、シーファウの言葉には、一言一言、想いが籠もっている。


 アイリーナが聞きたかったのは、聖獣のお告げの話のほうだ。だが、そんなシーファウの想いのほうに惹かれた。


「シーファウ王子って、本当に聖獣さまを尊んでいるんですね。……だから、聖獣さまも王子が好きになんですね」


 アイリーナは言葉を止めた。


 シーファウの瞳に、一瞬悲しみが走ったからだ。


 瞳がかすかに濡れる。彼の水色の目はふしぎな色になった。


 ……なんで?


 まるで天然石に雫が落ちたみたいだった。だが、そんな色はすぐに消えた。


 彼の表情はいつもの闇属性にもどっていた。


 遠くで、サフがそんはシーファウを見つめていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る