第2章 9話 聖獣の森の展望台①

 展望台は離宮の南側にあった。階段を上りきったアイリーナは息を飲む。


 聖獣の森より前に、まず展望台の緑に目を奪われた。まるで屋上庭園のようだった。


 ポプラに、桜、オークなどの木が葉を茂らせている。根元には淡い色の花が咲いている。


 涼しい木陰には白いテーブルとイスが置かれていた。


「すごいっ、きれいですっ」


「そうだろ? 母上たちが、俺が癒されるようにって、造ってくれたんだ」


 シーファウは自慢気にわらう。


「それから、その向こうに見えるのが聖獣の森」


 アイリーナはどきどきして、シーファウが指差す先を見た。


 緑の香りが濃くなった気がした。青い青い森の色に目が染まる。


 異世界の森は壮大だ。前世の世界では、自然は汚れていた。こんな深い森は見たことがない。


 太い幹の木々が、大きく枝を伸ばしている。みな長く生き、幸せそうだ。葉の色は深みがある。長い時間の積み重ねが見えるようだ。


 深い香りがアイリーナを包む。


 あれが聖獣の森……。あの森のどこかに聖獣がいるんだ。


「ねえ、みかん。見た? すっごいきれいだよ。聖獣さまがいるんだよっ」


「気に入った? アイ。みかん」


「はいっ、とても」

『とてもっ』


「ねえ、アイ、みかん。森のところどころには、泉が湧いているんだよ」


 シーファウは目を細め、森を見つめる。

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