第2章 8話 アイリーナとみかんの部屋③

「すっごい。きれいだね」


『アイのとこもっ』 


「気に入りましたか? アイリーナ姫」


 シーファウが満足気に微笑んだ。


「ありがとうございます」


 急に優しくされると、どうしていいか分からない。


「でも、姫って」


「アイリーナは姫だよ。王女は王の子だけど、姫っていうのは広い意味で使われるんた。貴族の子とか、特別な存在に対してとか」


 そういえば、前にそんな話を聞いた気がする。


「だから、今は姫って呼ばせてもらうよ。みかんも姫だよ。みかん姫」


 みかんは目をきらきらさせてうなずいた。


 アイリーナは頭がぼおっとしてきた。


 ソファにすわって部屋を眺める。頬が熱くてどきどきする。


 まるで風邪でもひいたみたいに、気持ちがふわふわした。


 しばらくそうしていたアイリーナは、あれ、と思った。

 

 明日、わたしは屋敷に帰るのに、部屋の準備?

 なんだか、待遇がよすぎない?


 アイリーナはふしぎに思ってシーファウを見る。


「三日しかいないわたしのために、いいんですか?」


 彼は麗しい笑顔を返してきた。質問には答えない。

 その笑顔の中に、なぜか闇を感じた。


 アイリーナは、またぶるっと震えてしまった。

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