第2章 6話 アイリーナとみかんの部屋①

「じゃあ、早速展望台に行こう。……あ、でも」


 シーファウは、急にドアのほうを振り返る。


「その前に、あれの準備ができたみたいだ」


 同時にドアがノックされた。サフが顔を出し、シーファウに一礼する。


「シーファウさま」


「ああ、用意できた?」


「はい。予定通りにいかず、申し訳けございません」


「だいじょうぶだよ。無理をいったのはこっちだし。さて……」


 シーファウはうれしげにアイリーナを見た。急に見せる笑顔にアイリーナはどきっとする。彼にはよく不意打ちをくらう。


「さて、アイリーナ。準備が整ったよ」


 準備?


「君のための部屋を用意したんだ。呪いを抑える術が完璧に施してある部屋だよ」


 わたしの部屋。


 そんなこと考えてくれてたんだ。勉強や公務ばかりしているんように見えていた。


「元々、俺の第二私室だったんだ。でも、そんなに部屋は必要ないし。女性向けに内装もかわいく変えたよ」


「……ありがとうございます。でも、そんな厚遇いいんですか?」


「恩があるからね。それくらいのことは。みかんちゃんのスペースも作ったからね」


 みかんの?!


 つい、声をあげそうになった。目をみはったアイリーナをシーファウは観察するように見る。


 サフはくすくすわらった。


「じゃあ、行こう。廊下の突き当りの部屋だよ」


 ああ、あのすごく大きな、装飾がきれいなドア……。


 離宮に来たときから気になっていた。他と比べて豪奢なドアが二部屋くらいあったのだ。

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