第2章 5話 シーファウの喜び②

 そういえは、シーファウは自由になったのに、まだ離宮に籠もっている。出歩きたくないんだろうか。

 わたしだったら、十日は遊び続けるだろう。


 もしかして、シーファウ王子はわたしにつき合って籠もってくれている?


「展望台への階段は長いからね。気をつけるんだよ、アイ。それから、手すりから落ちないようにね」


 アイリーナがうなずくと、シーファウはいい子いい子をした。


「あの、シーファウ王子。いい子をしていいのは、わんちゃんだけですよ」


 シーファウは返事をしない。


 ふふふ、と、込みあげるうれしさを堪える顔をする。


「どうしたんですか?」


「いや、人を護るっていいものだな」


 さっきもそんなこといってたけど……。

 冗談だろう。闇の王子にそんな感情はない気がする。


「わたしの不幸がうれしいんですよね……」


「そんなことはないよ。俺は君から、人を護る幸せを教わったんだ」


 ふふふ、とシーファウは微笑む。


 護るといわれているのに、なにかが怖い。

 王宮って、やっぱり怖いところだ。呪いどころじゃない、怖いことが待っている気がする。


 アイリーナはみかんをぎゅっと抱き締めた。

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