第二章 王宮の奥の奥 シーファウの離宮

第2章 1話 シーファウの離宮で①

 窓の外の日差しはやわらかく、白い小さな花が風に揺れている。


 二日前、呪いを受けたときのことを思い出していたアイリーナは、野原の花を見て現実にもどった。


 今日はやっぱり散歩日和だ。みかんと散歩にも行きたい。あんな野原を歩きたい。


 特にみかんはつらいだろう。

 ああ、みかんと散歩したい。野原の花を数えたい。屋敷の前の小径でベンチにすわって、おやつを分け合いたい。


 海に行きたい。山に行きたい。

 旅行に行って三泊したい。


「あの、シーファウ王子。いつまでこうしていれば」

「いいから、アイはもう少し、ここで護られていて」


 シーファウはやけにうれしげにする。また呪いが解けた幸せを実感しているんだろう。


「うれしそうですね。シーファウ王子」


「そんなことない。悲しいよ。アイリーナみたいなバカ、……じゃなくて純粋な子を身代わりにしてしまうなんて」


 相変わらず、目は悲しんでない。


 ……本当に、なんでこうなったんだろう。離宮に来て二日。これ以上の不幸が起きないうちに、早く帰りたい。


「あっ、みかん。待って」


 アイリーナはあわてて立ち上がった。


 みかんはおもちゃを食らえて振り回し、部屋を駆け回っていた。そのみかんが、テーブルのほうに走って行ったからだ。


「みかん、そっちは危ないよ」


 テーブルの隅にはグラスが置いてあった。もし、あれが落ちたら、体が小さいみかんは大怪我をしてしまう。

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