第1章 23話 闇の王子の引力②

「アイリーナ姫」


 シーファウはアイリーナの前に立って優雅に微笑んだ。


「私な貴女を護らせてくれませんか?」


 ぼんっ、ど、頬が熱くなった。頭の中がが真っ白になり、アイリーナは動けなくなる。


 シーファウはアイリーナの手を引いた。アイリーナはふらふら歩き出す。

 そんなアイリーナの脚にみかんがしがみつく。


「だいじょうぶだよ、みかん。みかんはお家で待ってて」


 みかんはぶんぶん首を振った。


「君も来るかい?」


 シーファウはみかんを抱きあげる。みかんはきゅんきゅんシーファウに甘えた。


『行く』

「君は家族が大好きなんだね」


 いい子と、シーファウはみかんの背中を撫でる。動物に対する彼は、別人のように誠実だった。


「離宮は楽しいよ。聖獣の森には君の仲間もたくさんいるから」


 この人、みかんとサフさんにだけは優しい。


 なんで?


 ぼんやり思いながら、アイリーナは彼に引きずられていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る