第1章 22話 闇の王子の引力①

「いいじゃないか。面倒くさい王宮でちょっと我慢すればいいだけだよ」


「あの、面倒くさいっていったのは王子さまのことじゃないんですよ?」


 アイリーナはあわてて口を挟んだ。


「王族一般のことです。評判がいい王子さまのことは別です」


「俺はそんなに立派な人間じゃないよ」


「では、こういうのはどうですか?」


 しばらく続いた沈黙を、サフが破った。彼はずっとシーファウのとなりに控えていた。


「とりあえず三日、離宮でアイリーナさまをお預かりします。その間にシーファウさまとレンバードさまでこれからのことを協議して、妥協点を探しましょう」


 レンバードは答えず、ひたすらクッションを殴っている。だが、やがてその手を止めてうなだれた。


「諦めたみたいだね。じゃあ、支度をしておいで。アイリーナ」


 え?

「荷物は好きなだけ持ってきていいよ」


 アイリーナはソファにしがみついた。


 なんでそうなるの? ものすごく行きたくない。


 王宮なんて敷居が高い。知らないところに泊まりたくない。闇を感じる王子が怖い。

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