第1章 20話 レンバードの苦悩①

 アイリーナはみかんを抱いて隣の部屋に駆け込んだ。


「ね、ねえねえ、ねえねえ、レン兄さま。どうしようっ」


 レンバードはソファにすわり、クッションを殴っていた。

 リズムよく、ずっと殴り続けている。


 さっきからずっとこの調子だ。


 レンバードはアイリーナに呪いを移した王子への糾弾、保護の交渉をしてくれるはずだった。


 だが、王族の権力を振りかざすシーファウに完敗した。


 補償はないし、離宮でないと保護はしてもらえない。


 できたことは、一度アイリーナを屋敷にもどすことだけだった。


 呪いの情報を得ようてしても、機密だからと相手にされない。


 アイリーナが呪われた怒り。なにもできずシーファウにいい負かされた悔しさで引き込もってしまった。


 室内はカーテンが引かれ、薄暗い。


「で、これからどうする?」


 ドアの入り口からシーファウが覗いていた。


「ねえ、ビスター伯爵令息」


 シーファウはレンバードを呼ぶ。からかうような口調だ。 レンバードの表情は険しくなった。


「ビスター伯爵令息。呪いを防御する方法は考えついた? と、いうか。呪いの系統は分かったのかな?」


 レンバードはシーファウを睨みつける。

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