第1章 17話 王太子シーファウ②

「でも、急にそんなこといわれても。あ、あの一度屋敷に帰ります。朝ごはんの準備ができているだろうし。みかんのご飯も用意したいし」


 アイリーナはそろそろと足を踏み出す。


 木陰に入ったところで、一気に駆け出そうとした。だが、また黒曜石のような黒い光が降る。


 目が見えなくなり、アイリーナは木の根に足を引っ掛けた。体が傾く。みかんを抱っこしたままだ。

 アイリーナはみかんを庇い、なんとか体をよじる。背中から転んだ。


「アイッ」


 レンバードが駆け寄ってくる。


「どうしたんだ? アイ。今の光は?」


「なんか、王子さまの呪いが移ったみたい」


 いってしまってから、あわてて口を押さえる。


「あ、あの。レン兄さま。呪いのことは口外禁止だって」


「シーファウさまの呪いが、この少女に?」


 サフは顔を強張らせた。アイリーナとシーファウを交互に見る。


 緊縛した雰囲気の中で、シーファウだけが涼しい顔をしていた。


 ……また監視対象が増えた。


 そんな風にシーファウがつぶやくのが聞こえた。

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