第1章 16話 王太子シーファウ①

「久しぶりですね。ビスター伯爵令息」


 少年は品よく微笑む。


「サフさま? どうしてここに」


 サフと呼ばれた少年は、レンバードのとなりに立つ彼を示した。


「その方のお供で来ました」


「その方って……」


「この方は我が国の王太子、シーファウさまです」


 王子?!

 アイリーナは呆ける。


 彼が、あの尊いって噂のシーファウ王子?


「サフさまが王太子の第一の側近だて聞いてはいましたが……」


 レンバードはアイリーナと違い、あまり驚いた様子はない。


 顔を背け、見えないように舌打ちする。仕方なさそうに一礼した。


「王太子は王宮から出ないと聞いていましたが」


「今日は特別だよ。聖獣さまの夢の知らせがあったんだ。ねえ、ビスター伯爵令息。アイリーナは今日からしばらく、私の離宮に滞在するよ」


 離宮……、王子……。


 呆けるアイリーナに、シーファウはまたささやく。


「ねえ、君。繰り返すけど呪いのことは他言無用だよ。俺は簡単に罰を下せる立場にいるんだからね」


 その声は今までで一番冷たかった。


 罰? なんで?


 シーファウは針のような鋭い目で、一瞬アイリーナを睨む。


 思わずアイリーナは後ずさった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る