第1章 14話 豹変した少年①

「あ、あの、わたし、光のことは兄さまに相談してみます。もう帰るね」


「え? このまま? そういうわけにいかないよ」


「じゃあ、あなたが家に来てくれませんか? 早く森を出ましょう。王族の一部は面倒くさいです」


「二度目……」


 急に少年は表情を変えた。


 今まで優しげだったのに、ゴミでも見るような目をする。アイリーナは唖然とした。


「気が変わった。俺は君を帰さないことにするよ。俺の住処に行こう」


「え?」


「呪いのことは俺の責任だからね。君が心配なんだよ。俺の住処じゃないと、対処ができないんだよ」


 心配というが、彼の目に思いやりは感じない。


 第一印象の美しさや優しさが、すっかり消え失せた。少年の中の冷たさを感じた。


「じゃあ、行こうか?」


「え? 今から?」


「当たり前だろ。あの光は甘くないよ」


 少年はアイリーナの腕を引く。 


「初対面でそれはちょっと。迷惑かけますし」


「確かに俺の住処は誰でも来れる場所じゃないけと……」


 少年はじろじろとアイリーナを眺めた。


「君、バカみたいだし。狡猾な奴らと違って、実害がなさそうだからいいよ」


 バカ?!


 アイリーナは殴られたような気持ちになった。前世で親にいわれ続けた、大嫌いな言葉だ。


 お前はうちの子と思えないくらい勉強ができなあ。バカだから、獣医は無理だと。

 嫌な思い出がいくつもいくつも蘇った。


 呆然としてアイリーナは立ち尽くす。

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