第1章 10話 盲目の少年②

 うそ。


 なんで?


 アイリーナは思わず、手をぶんぶん振った。そうすれば、光が出ていくかと思った。


 だが、いくら振ってもなにも起こらない。


 やがて、なにかがアイリーナに降り注ぐように落ちてきた。さっきの黒曜石のような光だ。

 さっき、レンバードと見た光と同じだった。


 え? と、アイリーナは目をみはる。


 まるで、その光から闇をもらったように、アイリーナの視界が黒くかすんだからだ。


 闇は濃くなり、アイリーナは目が見えなくなる。思わず辺りを手で探ったアイリーナは、幹に指を思い切りぶつけた。


「え? だいじょうぶ?」


「め、目が見えませんっ」


 少年が息を飲む気配がした。彼は肩をつかんで、アイリーナの体を支えてくれた。やがて、目は見えるようになった。


 最初にアイリーナの目に映ったのは、険しい顔をしてアイリーナを見ている少年だった。彼は目を泳がせて黙り込む。


「聖獣さまの夢の知らせは、このことだったのかな……」


「聖獣さま?」


 少年はなにも応えない。北西の方向を見つめていた。南には王宮や聖獣の森がある。


 聖獣、と口にした彼は、とてもきれいな表情をしていた。聖獣を畏れ敬っているのが分かった。


 ここからは聖獣の森は見えない。


 それでも少年は北西を見つめ続けている。そんな彼の立ち姿は、なんだかとても清らかだった。

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