第1章 9話 盲目の少年①

「植物を見ていたんです。草や芽や。森の地面近くには、美しいものがたくさんあるんですよ」


「でも、もしかして目が見えないんじゃ……」


「目? まさか。この木の芽吹きも、あなたの足元の桜色の花もよく見えます。美しいですよね」


 少年のいうとおり、地面には小さな花が咲いていた。彼は花の前ですわる。


 本当に見えるらしい。さっきは確かに見えていなかったはずだ。

 どうして隠すんだろう。 もしかしたら、彼は盲目だと知られたくないのかもしれない。


「あなたの姿もよく見えますよ。花の髪飾りが似合いますね」


 似合いますねと、少年は微笑む。アイリーナは一瞬目まいがした。


 彼みたいな人間に褒められると、やけにどきどきする。


 すわったままの彼に、アイリーナは手を差し伸べる。少年は無表情でそれを受ける。


 やはり見えるようだ。アイリーナの勘違いなんだろうか。


 思ったアイリーナは、目をみはって手に視線をもどした。


 少年と手が触れた瞬間、手の周りが輝き出したからた。薄墨色の光だった。


 光は強い輝き放ったあと、アイリーナの手に吸い込まるように消えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る