第1章 5話 王宮の奥の深窓の王子①

「あれ……」


 レンバードが森の奥を探るように見ていた。


「どうしたの? レン兄さま」


「近衛兵がいたみたいなんだ」


「え? 森に? こんな街外れにめずらしいね」


「そうだね。でも確かに、近衛の制服が見えた」


 近衛がいるということは、王族がいるということだ。王族が来るのは、教会や福祉施設がほとんどのはずだ。


「誰だろうな。まあ、王太子じゃないだろうけど」

「そうだよね。王子さまは今日も離宮だよね」


 この国には、シーファウというとても優れた王太子がいる。彼は王宮から出たことがない。


 この国の守り神の意志で離宮から出ないそうだ。守り神は青泉の森に住む聖獣だ。


 シーファウは聖獣に愛されら祝福をもらった特別な王子だ。

 国のみんなも憧れている。

 

 深窓の王子という表現かぴったりで、美しく、無垢で純粋だ。かすみの王子ともいわれている。


 聖獣に愛されるにふさわしく、誠実にひっそりと暮らしている。王宮の何重もの扉の向こうで、大事に籠められている姫のようだ。

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