第1章 4話 朝の森へ散歩に②

 外に出ると、朝の冷たい空気に包まれた。アイリーナは深呼吸する。


 異世界の空気は本当に澄んでいる。大気の中にいるだけで、体が浄められる感じだ。


 空は鮮やかな水色、森の木々は生き生きとして幸せそうだ。


 アイリーナとレンバードは森の小径をゆっくり進んだ。

 レンバードが話してくれた野原はすぐに見えてきた。彼のいったとおり、白い春紫苑が満開だった。


 みかんが花に駆け寄る。

 言葉が話せる異世界の動物は、花の美しさも理解する。


 アイリーナとレンバード、みかんで並んで紫苑を眺めた。


「奥のほうでは、春紫苑とたんぽぽが一緒に咲いてるよ」


「みかん、行こう」


「こっちにも来て。みかん」


 みかんは、アイリーナとレンバードの真ん中を歩く。


 レンバードの髪と瞳は、アイリーナの色より少し薄い。顔つきはアイリーナに似ている。

 みかんの目も、アイリーナと似ていると思う。


 並んで歩けは、完璧に家族と分かるはずだ。


「ねえ、レン兄さま。こういうの、川の字歩きっていうんだよ」


「川の字? 意味が分からないよ?」


「あ、あのね。前世の文字なの。川の字は三本の縦線だったの。それが家族の姿を表しているんだよ。一番長い縦線がレン兄さま。次がわたし。そして、真ん中一番短い線がみかんだよ」


「アイの考えることはいつも優しいね」


 アイリーナたちは並んで、ずっと歩いていく。異世界の澄んだ風が流れる。


 じんじんと幸せを感じた。

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