第1章 3話 朝の森に散歩へ①

「おはよう、アイ」


 部屋を出たアイリーナは、食堂に向かう。振り向くと兄のレンバードがいた。


「おはようございます、レン兄さま」


「家で敬語はなしでいいよ、アイ」


 アイリーナが転生したのは貴族の家だ。本当なら息がつまるような規律正しい生活のはずだが。アイリーナは緩く暮らしている。


 家族がみな、アイリーナに甘いからだ。前世での家とは逆だ。


 特に兄のレンバードは優しい。


 家の執務は全て引き受けて、アイリーナを獣医の勉強に専念させてくれている。年はアイリーナより二つ上の十七才だが、とても大人で頼りになる。


 家族に冷遇された前世とは大違いだ


「アイ、朝の散歩に行かないか? 野原の花が満開だよ。みかんも行こう」


「うんっ」


 窓から見える野の花は、朝日を浴びて幸せそうだった。アイリーナはドアから飛び出した。


 ……いい始まり方をしたこの日の朝。


 楽しい時間になるはずだった。だが、アイリーナは彼と出逢った。アイリーナの生活が一変してしまった。

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