第1章 2話 アイリーナとみかんの朝②

「えー、起きようよー」


『寝る』


 みかんが話すのは、ほんの短い言葉だ。それでもうれしい。


 みかんは寝息を立て始めた。アイリーナはベットで上半身を起こして、みかんの寝顔を眺める。


 レースの天蓋をめくり、ベットサイドのカーテンを開ける。大きな窓の向こうには、中世ヨーロッパみたいな森が見えた。異世界の自然はきれいだ。


 五階建てのアイリーナの屋敷からは、辺り一帯が見渡せる。遠くには海が見えた。


「そうだ、みかん。健康診断させて」


 アイリーナは手に霊力を集中させて、そっとみかんのお腹に手を当てる。

 異常はなかった。みかんの体調が手に取るように分かる。幸せでジーンとした。


 ひと息ついて、アイリーナはベットに転がった。幸せがじんじん滲み出てくる。今日も健康なみかんと、平和な一日を過ごせるだろう。


 前世でのアイリーナは勉強ができなくて獣医の夢を諦めた。だがこの異世界でアイリーナは強い霊力を持って生まれた。


 いつか獣医学系の家庭教師を呼んでもらう。霊力を生かした獣医になる。


 異世界でのアイリーナの夢だった。

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