第一章 わんこと一緒に異世界転生

第1章 1話 アイリーナとみかんの朝①

 屋根の上から朝を告げる鳥の声がする。木琴のリズムのようだ。


 朝、目が覚めると、アイリーナはまず周りを見回す。今朝のみかんは掛け布団の上にいた。


 わんこらしく、体を丸めて眠っている。みかんはクリーム色のポメラニアンだ。


「おはよう、みかん」


 みかんは黒くて宝石みたいな目をパッチリ開ける。小さな体をアイリーナにすり寄せてきた。


 この瞬間は最高だ。この世界だから、もらえる穏やかな幸せ。

 異世界って本当に夢の国だ……。


 朝のこんな時間は、特に幸せを実感できる。


 異世界は時間の流れが緩やかだ。深呼吸しながら暮らせる。


 慌ただしくて締めつけられていた前世と全然違う。


 なにより、みかんと一緒に転生できた。アイリーナとみかんは前世でも家族だった。

 みかんとの生活が楽しい。この異世界は、アイリーナとみかんにとって奇跡だ。


「そろそろ起きる?」


『まだ寝る』


 みかんはわんこだが、この異世界では話すことができる。霊力で話せるように術をかけるのだ。


 異世界で人と暮らす動物は、たいていそんな術がかけられている。

 前世でずっと夢だった意思疎通だ。

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