プロローグ③

「だから、いったのに」


「だいじょうぶ、すぐ収まります」


 アイリーナはしばらくじっとしていた。今までと同じで、時間が経てば『あれ』は消えた。


 たが、完全に消える前に歩き出したため、脚がもつれた。体が傾く。


 シーファウが椅子が立ち上がる。あっという間にアイリーナの隣に立ち、アイリーナを支えた。


 洗練されたすばやい動きだった。


 人間離れしている。アイリーナは目をむいて彼を見つめてしまった。


 あんな早業をやってのけたのに、その表情には余裕がある。呆けているアイリーナに、逆にうれしそうにした。


「びっくりしたんだね。だいじょうぶだよ、俺が君を護るから」


「ありがとうございます。……あの、シーファウ王子。やっぱり喜んでません?」 

「なにを?」


「今の『あれ』です。わたしがシーファウ王子の代わりに呪われたことですよ」


「そんなことあるわけないよ」

 言葉と逆に、シーファウは頬を緩ませる。

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