第23話《あなたの一部をいただきます。③》

「おい、愛美しっかりしろよ…」

大輝は愛美を支えながら彼女の様子を確認する。

愛美の顔は真っ青で冷や汗が滲んでいる。

「痛い…それと足が…」

「どうしたんだよ…なにがあっ…」

「足が、足が…動かない…まるで何かに引っ張られてるみたい…」

愛美は苦痛に顔を歪めながら足元を見つめ続ける。

だがその表情から何か見えない力が彼女を襲っていることは明らかだった。

「誰か助けて…」

彼女の震える声に周りの友人たちは言葉を失った。

翔太が再び彼女を支えようと手を差し伸べるがその瞬間、愛美が突然の悲鳴をあげる。

「いやああああ!」

その叫び声はまるで何かが愛美の体を引き裂いたかのような耳をつんざくような音だった。

「愛美!どうしたんだ!?」

大輝が慌てて駆け寄るが次の瞬間、彼の足元で「パキッ」という不気味な音が響く。

「なんだ 何があったんだよ愛美!」

まるで骨が砕けたかのような音が耳に入り、愛美の方を見る。

「うわっ!!」

大輝が愛美の方を見ると愛美の足首がぐにゃりとした異様な角度で曲がっている。

だが血は一滴も流れていないその足は明らかに異常だ。

――まるで誰かに無理矢理引き裂かれたように。

「なんだよこれ…こんな…こんなの見たことねえよ…」

大輝は目を見張り何も言えずにその場で立ち尽くす

愛美は地面に崩れ落ちたまま激痛に絶えるように顔をしかめている。

「うっ…動けない…痛い…痛いよ大輝…」

彼女は震える手で自分の足を触ろうとするがその手に触れた瞬間に再び足が「バキバキッ」と音を立てて折れ曲がる。

「痛い痛い痛いっ!!」

愛美が悲鳴を上げる。

「やめろ!触るな!」

翔太が叫び、愛美の体が不自然に跳ね上がる。

「えっ…なに…?」

まるで何か見えない力に引っ張られているかのようにだ。

「いやあああああ!!」

愛美の叫びが店内に響き渡る。

周りの客たちは異変に気づいて次々と驚いた表情で彼女を見つめるが、誰もがただ愛美の様子にただただ青ざめるだけで何も出来ずにいる。

「誰か…助けて…」

里奈が周囲に助けを求めるが誰も彼女たちに近づこうとしない。

むしろ客たちは一歩引いてその場から離れようとする。

――客たちの表情が何故か里奈たちは気づいてはいなかった。

「何だこれ…一体何が起こってるんだ…」

大輝は目の前の異常な光景に目を見張り理解が追いつかないままだった。

愛美の足は完全に折れ曲がり、彼女は動けなくなっている。

「痛い、痛いよ…」

愛美は完全に折れ曲がった足の激しい痛みに耐えられずにいる。

「ねぇ、なんでこんなことになってるの!?何が私たちを狙っているの!!?」

里奈が恐怖に震えながら叫ぶ。

彼女の声には明らかな絶望が込められていた。

その時、再び"プルルルル"と愛美のスマホが鳴り響く。

画面には新たなメッセージが表示されている。

「『次はあなたの腕をいただきます。』」

「嘘だろ…まさか…」

大輝は目を見開いて信じられないものを見るように愛美を見つめる。

「やめろ!やめてくれ!!」

翔太が叫びながら彼女に近づくが次の瞬間、愛美の腕は「バキバキッ」と大きな音を立てて不自然な方向に折れ曲がった。

「いやああああ!!」

その叫びはこれまでのどの悲鳴よりも大きく凄まじいものだった。

彼女の腕はまるでが見えない鎖で引き裂くかのようにゆっくりとその形を崩していく。

「ううう…」

「こんなこと…ありえない…」

大輝は震えながら後ずさり、何もできずにその光景を見つめることしかできなかった。

愛美の体は無惨にも地面に崩れ落ち、腕と足が異様な角度に折れ曲がったまま、彼女の表情は絶望と苦痛に満ちている。

「なあ…これって夢じゃないよな…?」

硬直しながら震えている翔太が呆然とした表情で呟くが誰れも答えない。

ここにいる皆も同じ気持ちだからだ。

「ねえ、もうこれ無理だよ…私たちだって…」

里奈は震えたままだ。

その時、大輝のスマホも振動し、新たなメッセージが届く。

「『次はあなたの番です。』」

「う…嘘だろ…まさか俺が…」

彼は画面を見つめた後で背筋が凍るような感覚に襲われた。

――もう逃げ場はない。

彼らを狙うは確実に近付いている。

「死にたくない…ここから逃げるしか…」

大輝は震えながら必死に周りを見渡すが、既にその場には彼ら以外の客は誰もいなくなっていた。

静まり返った店内には彼らの息遣いだけが響いている。

「ねえ…助けて…」

愛美のか細い声が耳に残るが、彼女の体はもう動かなかった。

無惨にも奪われた彼女の足と腕。

その凄惨な光景が大輝たちの頭の中に深く刻み込まれていく。

「俺たちはどうなるんだ……」

大輝は呟きながら次第に暗くなっていく視界の中で必死に答えを探していた。


★★☆☆★★






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