第20話《乗り換え不可能⑥》

「…ドアが閉まる!」


佐藤が叫んだ。私たちは全力でドアに向かって走ったが、その扉はまるで意思を持っているかのように、ゆっくりと音を立てて閉じ始めていた。


「急いで…!早く、早く!」

私は必死に叫びながらドアに向かって手を伸ばしたが、あと数メートルというところでドアは完全に閉じてしまった。


ガシャン!


無情な音が響くと同時に、私たちの逃げ道は完全に断たれた。


「…だめだ、終わった…俺たち、もう…」

佐藤が肩を落とし、その場にへたり込んだ。顔は真っ青で、汗が額から滴り落ちていた。


「やめて!諦めないで!まだ方法があるはず…」


私は佐藤を励まそうと必死だったが、自分自身も恐怖に押しつぶされそうだった。背後からは、冷たい足音が響き渡る。ゆっくりと、確実にこちらに近づいてくる。


カツ…カツ…カツ…


その足音が止まった瞬間、私は振り返った。そこには、白い着物の女が立っていた。目は真っ黒で、何も映していない。彼女の口元がゆっくりと歪み、まるで嘲笑するかのように薄ら笑いを浮かべた。


「いや…いやだ…来ないで…来ないでぇ!」


私は後ずさりしながら叫んだが、女の姿が一瞬で目の前に迫った。まるで時間が飛んだように、彼女の手が私の喉に触れた瞬間、私は凍りついた。


「…もう終わりか…」


佐藤が呟いた。その言葉と同時に、背後から他の幽霊たちの姿が見えた。かつての乗客たちだ。彼らは既にこの世の者ではなく、抜け殻のような表情で私たちを囲んでいる。


「佐藤…助けて…」

私は震え声で彼を呼んだが、佐藤はただ黙ってカメラを回し続けていた。彼の目にも、もう希望は残っていなかった。


「…お前も、撮っておけよ。この…終わりを…」


彼の声は虚ろだった。次の瞬間、幽霊たちが一斉に私たちに襲いかかった。冷たい手が首に絡みつき、身体が宙に引き上げられる感覚に襲われる。


「助けて…!やめて…!」


叫び声も無意味だった。視界が次第に暗くなり、身体の感覚が遠のいていく。そして最後に見たのは、佐藤がカメラを回し続ける姿だった。


バチン!


突然、画面が切り替わり、無情にも動画の終了アナウンスが流れる。


「…これが、最後の映像です。ニュースキャスターとカメラマンは、行方不明のまま見つかっていません。動画はここで終了しますが、彼らが何を見たのかは、永遠の謎となるでしょう。」


無機質な声と共に、画面は真っ暗になった。


――そこで6つ目の動画は終了した。

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