第12話《動く屏風絵②》
撮影が進む中、徐々に空気が変わり始めていた。最初は小さな違和感だった。湿っぽい風が吹き、何かがカサカサと動くような音が辺りに響く。誰もそれがどこから来るのかはわからなかったが、全員が無言でその不気味な空気を感じ取っていた。
突然、カメラマンのDが低い声を漏らした。
D:「あれ…なんか、気分が…悪い…」
彼は顔色を青白くし、手でカメラを支えながらふらついていた。周囲に異常なほどの冷気が漂い、まるで霊気に触れたかのような寒さが彼を包み込む。
A(心配そうに):「大丈夫ですか?無理しないでください。ちょっと休んだ方がいいかもしれません…」
C(冗談めかして):「やばいな、ここまで来て体調崩すとか、呪いのせいじゃないの?この場所、やっぱり何かあるよ…」
だが、Cの軽口に反応することなく、Dは口元を押さえた。彼の顔には明らかに異変が見られ、額には冷や汗がにじんでいた。
B教授(冷静に):「ここにいるだけで体調を崩すのは不思議なことではない…この寺や屏風には、長年に渡って集まった何かが宿っている可能性が高い。負のエネルギーというべきか…」
その時、**ギギギ…ギシリ…**と、屏風から微かな音が響いた。金属を擦るような、耳障りな音だ。全員が一斉に屏風の方を振り向く。屏風絵に描かれた侍の首が、わずかに動いたように見えた。
A(小声で):「今…音が…」
C(震えながら):「嘘だろ…画が、動いてる…?こんなこと…ありえない…!」
再び、**ギシッ…ギシリ…ギギギ…**と音が響く。屏風絵に描かれた侍の首が、ほんのわずかに角度を変え、まるで周囲を観察しているかのように見える。
D(急に苦しみ出して):「や、やばい…なんだこれ…体が…重い…」
Dはその場に崩れ落ち、カメラを手から離した。彼の息は荒く、まるで何かに押しつぶされるように苦しみ始めた。
A(叫ぶように):「誰か、助けて!カメラマンが…!こんなところに長くいたら、本当にまずい…!」
B教授(冷静さを保とうとしながらも動揺し):「彼は…負のエネルギーに直接影響を受けたのかもしれない。この場所に宿るものが、我々に干渉し始めたのだ…!」
ギシッ…ギギギ…。再び、屏風絵がわずかに揺れ動き、侍の首がじっとこちらを見据えているように感じられた。無表情なその目が、まるで何かを見定めているかのように静かに光る。
C(絶望的な声で):「なんでこんなことが起きるんだ…?これ、冗談だろ?俺たち、もしかして…やられるのか…?」
再び音が響き渡る。屏風の裏側から何かが擦れるような音、そして湿ったものが動く音が、あたりを漂う。まるで何かがこちらに迫ってくるかのようだ。
A(震える声で):「これ…本当に…逃げた方がいい…呪いが…本物だなんて…!」
だが、全員が逃げようとした瞬間、カメラの映像が一瞬ぼやけた。カメラのモニターには、侍の首がじっとこちらを見つめる映像が映り、次の瞬間、映像が暗転する。
B教授(動揺しながら):「これは…どうやら、我々はすでに逃げ遅れたのかもしれない…」
カメラの映像が再び映し出されたとき、Dはもう動いていなかった。彼は地面に横たわり、冷たい汗にまみれて苦しそうな顔をしている。全員が言葉を失い、重苦しい空気がその場を支配していた。
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