第22話 運命の果実
それは樹でした。しかし人の
多すぎる指が絡みあって締めあげ、オシアンはもがくことすらままならず、
短剣はオシアンの手を離れ、
暴かれた
厚い
アトロゥの見あげる視界の下すみで、黄金がしぶきました。黄金はほどけ、糸となって、アトロゥの目から去りました。
黄金の糸は、アトロゥの目を引きました。我知らず瞳は金糸を追って、うつむいたアトロゥが見たものは金髪の娘でした。娘はアトロゥの胸もとで、祈りをささげるように両手を握りあわせていました。
アトロゥの冷たい瞳を見かえす娘の瞳は、恐怖に見ひらかれ、怯え、たじろぎ――祈りのこぶしは解かれました。
アトロゥの胸もとに、木彫りの短剣が突きたっていました。木々の
アトロゥは、胸もとの短剣を無表情に見おろしました。アトロゥに、その光景を理解し、感情を示す
やにわアトロゥの首が青すじを立て、はち切れんばかりにふくらみました。
アトロゥの口から、痛苦の
樹の
やがてオシアンは、アトロゥの
それは枝でした。しかし三人の女の
羽衣の女たちは、しなをつくって絡みあっていました。その
羽衣の少女の右手は、小指が弧を描いて立てられ、薬指が優美に伸ばされ、中指が控えめにたたまれていました。人さし指は親指と輪をつくり、ちっぽけな樹の実をつまむようにみのらせていました。
ちっぽけな樹の実は、
オシアンは
オシアンは、
アトロゥの口から伸びた
アトロゥの脚は根となり、巨大なかぶのように丸くふくれ、地面を爆裂してうがちました。
根は
枝は
おびただしい数の、根が、幹が、枝が、葉が――瞬く間に森の
アトロゥは、自身が産んだ木々に埋もれ、自身も木になろうとしていました。固まりかけた手をきしませ、胸もとに突きたつ短剣に指をかけました。
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