第五章
第11話 ティットトットのさえずり
パック、オシアン、ブバホッド、ワッピティ――四人は、森の小山の頂にいました。
小山の頂で、パックがつくり出したその樹は、岩塊のような根もとから、うねうねと幹をくねらせ、絡ませ、中空にそびえました。
……ビィィィィィ…… ……ビィィィィィィ……ィィィプッ……
……ビィィィィィィィィプッ…… ……ビィィィィ……ィィ……
「……うーん、ふた組いるかな」
つぶやいたワッピティの眼下には、起伏激しく、遥かに密林が広がっていました。
彼方に見ゆる
降りて来たブバホッドとワッピティに、オシアンが尋ねました。
「なんじゃもんじゃがいる方は、どっちだ?」
「東側だね。どっちから狩る?」
そう答えたワッピティの問いには、ブバホッドが答えました。
「なんじゃもんじゃは、厄介になるかもしれない。西側から片づけよう」
各々の武器を拾って、先へ進もうとするブバホッドとワッピティに、オシアンが呼びかけました。
「君たちは、先行しろ。僕はパックに話がある」
ワッピティは、薄笑いで返しました。
「おじいちゃん、疲れちゃったぁ?」
ブバホッドは、気遣わしげに明るく言いました。
「お話が終わるまで、お待ちしますよ」
「いいから、先に行け! グズグズしていると、
オシアンは、口角泡飛ばしてどなりました。
「僕たちはすぐに追いつく!! 早く行け!! そらそら!!」
杖をふり回し、追いたてるオシアンに、ふたりはあきれて言いました。
「やっぱ、連れて来るんじゃなかったね!」
「君が言うなよ……」
パックは、しぶしぶ走りさるふたりの背中を、オシアンとともに見おくりました。
「……で、なんだよ」
尋ねたパックの両肩に、オシアンがつかみかかりました。
「……パック。僕と君たちとは、違う時の流れを生きているのだよ。君には分らんだろうが、僕はとっくに死んでいい歳なのさ。僕が
オシアンの言葉が進むにつれ、パックはガクガクと揺さぶられ、目を回しかけました。
「……あ、あぁ。そんじゃ、とっとと――」
「それから、プーカに伝えてやってくれ……君の母君はな……いつだって君を想い、見まもっているのだと……」
パックは、急に解きはなたれたました。頭をさすりながら、改めてオシアンを見ました。
はげ上がった頭に、
「……わかったから、とっとと行こうぜ。逃げられちまうんだろ」
パックは「どっこいしょ」と、オシアンをおんぶしました。するとオシアンは、勢いを取りもどして杖を突きだし、声を張りあげました。
「さて! おそらくアトロゥがいるのは、東のなんじゃもんじゃの方だ! さあ、パック! それ行け!!」
パックはあわてて訂正しました。
「ブバホッドたちが向かったのは、そっちじゃないだろ!」
オシアンはパックの
「グズグズしていると日が暮れて、君はあのやかましい鳥ともども、寝ちまうだろうに!! それ行けパック!! それ行け!!」
しかめっ面にあぶら汗を伝わすパックは、オシアンの気迫に押され、結局言いなりに進みました。
そんなふたりの様子を陰からうかがい、あとをつける者がありました。ショートヘアから垂れ耳をはみだす
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