第四章
第9話 森の隠者
「――それでねぇ、その女の背中は朽ちた木のように、
プーカは、両手の木の実をシャリシャリ
パックも、片手の木の実をかじって答えました。
「なんだ、そりゃ。化け物だな……」
「それからねぇ、人面シカがうろついてたって、ワッピティが聞いたってぇ」
「あいつテキトーだからなぁ。まぁ、この森にはヘンなのがいるけど」
パックはそう言って、頭上高きに止まるドクロ模様の鳥を見あげました。
「ののしり
わざとらしく声を低めるにプーカに、ドクロ模様の鳥――『
枯れ枝をブンブンふり回し、鳥を追いはらうプーカを横目に、パックが言いました。
「知ってら、そんな迷信」
プーカはひと息ついて、話を続けました。
「あとねぇ、不思議な獣に乗る男を追いかけるとぉ、突然なんじゃもんじゃ様が現れて、行く手をふさぐんだってぇ」
「それは――」
ピュゥゥゥゥゥィ………………
それはかすかに響く、彼方のゆびぶえの音でした。
大耳の
ピピュウウウウゥゥゥゥゥゥイィィィ…………………
パックの返信からしばらく――
緑髪の娘の跳ねるにつられ、彼女の左右に結った草色の長髪も跳ねていました。はだけたボタンどめのパーカーは大きくふくらみ、内のキャミソールとショートパンツもはためいて、全身に風をまとって飛ぶようでした。
ふたつ結いの緑髪の娘は、
「おーい、チビどもー!」
プーカは、見あげる
「あ、ワッピティだ」
ワッピティと呼ばれたふたつ結いの
「里長が呼んでるよ! ボガートが
***
パックとプーカには見なれた家の扉を開けると、なじみの光景がありました――ぽっちゃりでさらり長髪なアーチンの難しい顔。それから、細身でくせっ毛短髪なオベロンの、エプロン姿が。
パックの樹の力は有用にして強大で、ましてや森に暮らす
「少し待ってくれ。ブバホッドを、使いに出している」
オベロンはそう言いながら、お茶を注いで皆にふる舞いました。クロスを敷いたテーブルの上には、お茶のほか、ケーキ、パイ、マフィン、クッキー、サンドイッチ、トースト、タルト、ジャム、バター、クリーム等々、菓子やら軽食やら彼の手料理がわんさとひしめいていました。
プーカが、トーストにジャムをべっとり塗りつけていると、戸が叩かれ来訪者がありました。
「オベロン様、アーチン様、お待たせいたしました」
そう言って入って来たのは、ミディアムの緑巻き毛を、七三になでつけた青年でした。シャツの二の腕にアームバンドを巻いて、そろいのベストとハーフパンツを着て――ネッカチーフまで飾った彼は、装いのみならず物腰にも
緑巻き毛の青年に続きもうひとり、
オベロンは、緑巻き毛の青年に向かって言いました。
「うん。ありがとう、ブバホッド」
ブバホッドと呼ばれた緑巻き毛の青年の陰から、
「フンッ、僕に関係のあることなんだろうね!」
オベロンは、
「君の話を聞こうと思ってね、オシアン」
誰の美しき
そして丸耳のオシアンは、
ティタニアとは違い、里になじめず離れて住まい、一部の変わり者が
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます