第8話 オーガの肉体
のっぽの
そのかたわらでは
「戦利品はどうかしら、ボガート?」
そう呼びかけたのは、さきほどの
ボガートと呼ばれた
「いつも通りさ。シケたもんよ」
ボガートは、首のとれかけた
「なぁ、フェノゼリー。あのやり方は、俺の趣味じゃねぇよ。
「野蛮人には、あのやり方が一番でしょ? それに、どうせすぐ死ぬんだし!」
ボガートは身ぐるみをはいだ
「ぜいたくな
転がった
「さてと……」
つぶやいたボガートは、最後の獲物漁りへと向かいました。
*
「あれ?」
ボガートは、ずきんの男だったはずのものを見おろして、首をひねりました。
胸もとに深くナイフの刺さった
「……首、落としたっけか?」
赤いずきんは見あたりませんでした。そこにあるはずの頭も、なめらかな切り口を見せ、首から消えうせていました。
*
「まったく、妬かないの! あなたには、ちゃんと拝ませてあげてるでしょう?」
フェノゼリーは、からかい口調でいいました。座ってくつろぎながら、ボガートがどんな反応を示すだろうと、期待に耳をそばだてました。しかし
身支度を終えたフェノゼリーは、肩ひものないタイトなワンピースをまとっていました。体の線はありありと、裸体に負けず劣らずの
フェノゼリーはジャケットをはおり、辺りを見わたしました。食事にいそしむ鳥たちがふた群ればかり。
「ボガート?」
呼びかけども返事はなく、フェノゼリーは歩きだしました。ほどなく、草むらで足に当たるものがありました。
見おろしたフェノゼリーの目に映るのは、彼女がよく知っている、そして探している者の横顔でした。その表情は、自身が胴から切りはなされたことへの
呼吸を忘れたフェノゼリーの背後から、下品にしゃがれた男のささやき声が耳うちしました。
「……それじゃあ、拝ませてくれよ」
フェノゼリーは我を取りもどしました。とっさに服の隠しを探り、小ぶりの突剣を抜きはなって、ふり向きざまに突きだしました。刃は赤いずきんを引っかけ、しゃがれ声の頭をむき出しにしました。
しゃがれ声の男は間髪入れず、突剣を持つ突きだされた手首をひねりあげました。
フェノゼリーは突剣を取りおとし、背中を抱えられました。なま温かい吐息を首すじに感じたのも、つかの間でした。男が覆いかぶさって、フェノゼリーはあお向けに組みふせられました。
フェノゼリーの面前に現れた
「ブタ面にしちゃあ、上等じゃねぇか」
厚い
ギョロ目のはまる顔は、一面に細かな
さりとて奇妙なのは、両こめかみから生えた角でした。根もとで折れ、朽ちた切りかぶのようでした。折れ角は、はげ上がった頭部へ根とも血管とも知れないものを、放射状に走らせていました。
そして、その男の耳はとがり、鼻はそり返り、肌は土色で、髪は草色でした。
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