第6話 ドゥードゥルドゥーヒキー
枯れた丸太の山に腰をかけ、ひと息つくパックの背に、忍びよる影がひとつ。
パックは、肩をツンツンつつかれました。のっそりと顔を向けたパックが見たものは、屈託のない笑顔を向ける、ひとりの愛らしい娘でした。
娘はふくらみ
パックとプーカが
プーカは、その
プーカは、パックへギュウギュウのしかかりながら言いました。
「追っかけないのぉ?」
パックは、いつものしかめっ面とともに返しました。
「あんだけおどかしときゃ、十分だろ」
「またアーチン様に怒られるよぉ?」
「…………」
「よし、私が行こう!」
直角に折った両腕を前後に、わざとらしく構えるプーカを、パックは適当にあしらいました。
「
「本当に行くもん」
「へいへい」
「うおー!」
*
結局パックがひとりで行きました。草やぶにわけ入りしばらく進んでいると、行く手をふさぐものがありました。
それは四足の獣でした。獣は、馬のような
その樹は、枝が、幹が、締めあげるように絡みあっていました。
頭と尻からは、やはり幹のよりがほどけた
枝葉の屋根の間には、男が座っていました 男の身なりは、貧相なものでした。くたびれたシャツは胸もとがはだけ、ズボンは
馬の動きにゆすられて、チラリとのぞいた男の顔は、まぎれもなく
男は何も語らず、パックと交錯した視線も、ぼんやりと虚空へ移りました。何ごともなかったかのように、獣とともに去っていきました。
パックはその不思議な背中を、ボケっと見おくっていました。しばらくして我に返り、
*
歩きだしてほどなく、パックの耳に響く音がありました。
ミシミシミシシ………… バキバキキベキ…………
木々の倒壊音がこだまして、なんじゃもんじゃの巨体が、パックの目に映りました。
それは樹でした。しかしカエルの
それは樹でした。しかしクマの
それは樹でした。しかし城の
それは樹でした。しかし無数の
パックは、
*
「やれやれだ……」
パックがグチりながら戻ると、プーカは静かにたたずんでいました。
プーカは胸もとで握りあった両手に、優しく伏せたまぶたをよせました。そして自身へ語りかけるように、ささやき声で唱えました。
「……なんじゃもんじゃ様……いつも森と私たちをお護りくださり、ありがとうございます……」
そのお祈りは、プーカだけがしていました。パックはいつも、黙って見まもっていました。
***
それは動く森でした。
不定形の巨体を
それが現れ、人々の目に触れるようになったのは、ティタニアが里へ来たのと同じころでした。
やがてその何だかわからない存在は、誰からともなく『
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