第二章
第4話 ゴブリンの森の冒険
「……ったく、辛気クセェんだよ」
陰うつな森をかっ歩する男は、誰にともなく言いすてました。
森を
大剣を背おう男――大剣の
「それにしても、あのずきん野郎、信用できるのかね?」
「前金は貰ったんだし、適当にブラついてりゃいいさ。ところでさ――」
そう答えた女は、くすんだ色の金髪から
筋骨
そんな彼らの耳を占領して会話を切ったのは、森をつんざく怪雑音でした。
ビイイイィィイィイィィィィィィィィィィィィィィィィィプッッ
それは、悪魔のホルンから鳴りわたる死の宣告――低い金属音が、にごり、よどんで、神経を
奇怪な音にたぐり寄せられるふたりの視線が捉えたのは、さらにキテレツな生き物でした。
ビイィィイイィィィィィイィィィィィィィィィィィィィィプッッ
大剣の
「見ろよ! 木の上でなま首がうごめいてるぜ!」
それは、人間の頭だいの白い球に、黒いまだらが入ってドクロのようでした。ドクロには、
剛腕の
「ただの鳥だろ、ブッサイクな!」
そう言って、下品に笑いあうふたりの背後には、もうひとり男がいました。
男はワシの
眉間の
「……おや」
深い木々を霧が包む、わびしき森の奥。人の立ち入りを
それは、少年のように見えました。
ワシの
「このような深山幽谷に、
それは、
剛腕の
「そんな訳ないよねぇ?」
それの耳は長くとがり、鼻は上向きにそり返って、短いボサボサ髪は草色、肌は土色をしていました。半月型のギョロ目が、
大剣の
「
ワシの
「ホドホドにしておけよ。
剛腕の
「ちょっと連れあるくわけ? 邪魔クサい……」
大剣の
「さぁて、手加減できるかねぇー」
それが角ですらなく確かに枝であったのは、頭から伸びて分岐した先に、薄っぺらでふちがデタラメに波うった緑色――『ナラの葉』がついていたからでした。
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