第3話 ありし日の追憶
その小さな女の子は、
女の子は、指で耳の先をつまみ上げて放し、また耳の先をつまみ上げて放し――とくり返していました。そのたびに耳は、ピンと張ってテロンと垂れ、またピンと張ってテロンと垂れ――とくり返しました。
意気消沈の女の子へ、かたわらに寄りそったネグリジェの娘が語りかけました。
「どうしたの、プーカ?」
プーカと呼ばれた女の子は答えました。
「だって、私の耳ヘンなんだもん……」
プーカの草色のショートヘアは、左右から耳さきを垂らしていました。耳は、肩のフリルの上で揺れていました。
娘は、ニッコリとして言いました。
「
「ママの耳はちいちゃくてかわいいけど、私のはヘンだもん……」
髪色以外はプーカと同じショートヘアから、丸い耳をのぞかせる、ママと呼ばれた娘――ティタニアの青白い顔に、かすかに赤みがさしました。いじけるプーカの耳に優しく口づけをして、抱きよせながら言いました。
「プーカがどんなに嫌ったって、ママはプーカの耳とプーカが大好きよ」
そんなふたりの背後へ、いつの間にやら
「私のかわいい
***
そんな日から間もなく、ティタニアは
ティタニアは、いまわのきわに自身の生涯を想いかえしました。それは郷愁と苦痛を蘇らせるものでした。しかしその締めくくりが、オベロンと小さな子供たちの笑顔と涙であることに満足し、穏やかにほほえみました。
***
それはありし日。
オベロンはひざまずき、彼の前へさしだされたティタニアの両手を、すがるようにつかんで言いました。
「ティタニア、
ティタニアは、その親身でたどたどしい
「私のあるべきは、あなたとパックとプーカがいるここだけです。あなたたちとともにあることが、今の私のすべてです。ここを
ティタニアは、オベロンの手を握りなおし続けました。
「パックとプーカにはその
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