第2話「寝坊勇者、最強の戦士と魔法使いに出会う!」


大広間の床で眠りに落ちた中野大輔は、誰かに揺さぶられて目を覚ました。


「おい、寝てる場合じゃねえぞ、勇者!」


目の前に立っていたのは、鋭い眼差しと強靭な体を持つ女性、アリアだった。


「俺、まだ夢見てるのか…?」


大輔はぼんやりと彼女を見つめた。


「夢じゃないわよ。あんたが召喚された勇者だっていうから、どんな奴かと思えば…まさか寝てるとはね。さっさと立て!」


アリアは大輔を強引に引き起こした。


「ご、ごめん。でも、勇者って言われても、何をすればいいのか全然わからないんだ…」


大輔は頭をかきながら、状況に困惑していた。


「まずは、仲間を集めて、この世界を旅しながら力をつけることよ」

アリアが説明を始めた。


その時、突然、


ドゴォォォォォォン‼


隣の部屋から爆発音が響いた。



「あいつか…また魔法の実験でもしてるのかしら」


アリアはため息をついて、扉を開けた。


扉の向こうには、煙が充満している部屋があり、その中で頭を抱えている青年、ルカスがいた。彼は魔法使いらしく、派手なローブを着ていたが、顔は煤で真っ黒になっていた。


「また失敗かよ…」


ルカスは煙を払いながら、大輔とアリアに気づいて手を振った。


「おっ、新しい勇者様か。どうも、俺はルカス。魔法使いで、まあ、いろいろと研究してるんだ」


「お、おう…俺は中野大輔。えっと、よろしく…」


大輔はまだ半分夢心地のような感覚で挨拶を返した。


「大輔、あなたの力が本当に『寝坊』だってこと、信じられないけど…」


アリアは疑いの目で彼を見た。


「まあ、これから何ができるか試してみましょう」


その後、大輔たちは王城の訓練場に移動した。アリアが剣を手に取り、ルカスが魔法の杖を構える。大輔は何も持たずに立っている。


「いいか、大輔。まずは、私たちがどれだけ強いか見せてやるから、その後であんたの力を見せてくれ」アリアがそう言うと、訓練場の真ん中に進み出た。


ルカスが手を振ると、目の前に巨大なゴーレムが現れた。


「こいつを倒してみせるよ」


ルカスが微笑みながら魔法を放ち、ゴーレムに炎を浴びせる。アリアもその横で軽快に剣を振り、ゴーレムを斬りつける。


大輔は、その圧倒的な力に驚きながらも、自分の「寝坊」の力がどう役に立つのか、全く見当がつかなかった。


ゴーレムが倒れると、アリアが息を整えて大輔に向き直った。


「さて、次はあんたの番よ」


大輔は戸惑いながらも、訓練場の真ん中に立った。


「でも、俺ができるのは寝坊だけで…」


「じゃあ、試してみなよ」


ルカスが興味深そうに大輔を見つめていた。


大輔は目を閉じて、意識的に「寝坊しよう」とした。すると突然、彼の周りの時間がゆっくりと流れ始めた。周囲の動きがスローモーションのように見える。彼が寝坊している間だけ、時間がゆっくり進むようになったのだ。


「え、これって…」大輔は驚いて目を開けた。


「おい、すごいじゃねえか!」アリアが感心したように声を上げた。「時間を操る力…寝坊もバカにできないわね」


「面白い能力だな」


ルカスも笑顔を浮かべた。


「これは戦いでも役に立ちそうだ」


大輔は初めて自分の力に少し自信を持った。しかし、この力が本当にどこまで通用するのか、まだわからないことだらけだった。


「これからの旅で、もっとこの力を試してみようぜ」アリアがそう提案すると、大輔も頷いた。「うん、そうだね。俺もやれるだけやってみるよ」


こうして、大輔はアリアとルカスという頼もしい仲間を得て、異世界での冒険の第一歩を踏み出すことになった。

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