クライアント

天川裕司

クライアント

タイトル:クライアント


俺は在宅ワークをしている。

シナリオライター。

いろんなクライアントのもとでやってきて、

今、新しいクライアントの所で

これまでにあんまり無かったような

未来都市伝説系シナリオ…というのを

書かせてもらっている。


「お、又リピートオーダー来てるな♪よし」


【テーマ依頼】

・今度は「東京都内 隕石落下事件」と言うテーマで面白く肉付けして書いてください


「はあ?やっぱりこうゆうのかよ〜」

正直ずっと書き続けてきて、ちょっと飽きが来ていた。

もともとはホラーサスペンス系を

自分なりに得意としていた俺ながら、

都市伝説系は少し畑違い。


【テーマ依頼】

・ありがとうございました。では次は「S町にある人気カフェ爆破事件」と言うテーマでまた面白く肉付けして書いてください。


「はあ〜〜…」(ため息)


いい加減、あんまりここの依頼が

魅力に感じられなくなってきた。

昔はそれなりに配慮してくれて、

俺の得意分野に似せたテーマを送ってきてくれたのだが、

最近は自己本位とゆうか、そんな配慮は全くせず、

とにかく自分が描いて欲しいテーマばかりを送り付けてくる。


まぁクライアントと言えば

それが当たり前なのかもしれないけれど、

共存共栄を図るとなると、少し考えなきゃならない。


【テーマ依頼】

・水の張ってないプールに飛び込み事件

・東京タワーと京都タワーがあと3日で倒れるハプニング

・日本の横にある小さな島が沈んでしまう

・世界中でインターネットが一時期中断

・太陽が昇る時間が大幅に遅れる


それからも納品ごとに次々テーマが送られてくる。

「あーあ。もうやめよっかな、ここ…。俺が書きたいヤツじゃないよなぁこれぇ」


でもそうしていると、信じられない事が起きたのだ。

テレビのニュースを見ていた時、

シナリオに書いた事がことごとく当たり始めた。


「え…?」

どれも短期間で全てが解決したので

それほど大きな話題にはならなかったが、

それと全く同じシナリオを書いていた俺にとっては

かなりビッグなニュースとして飛び込んできた。


しばらくあっけにとられる形で

ニュースを見つめていた時、

ピロン♪とあのクライアントからメッセージが届く。


【テーマ依頼】

・「在宅ワークをしていたシナリオライターの

奇妙な失踪事件」次はこのテーマでお願いします。できるだけ肉付けをして展開を膨らませ3000文字から4000文字程度で書いてください。


「………」

拒否反応が起きた。

あのシナリオたちが全部

現実の物事として起きていたこと、

これを無視できない俺は

今回、今届いたこのテーマも

「もしかして本当に起きてしまう?」

ものとして当然無視できない。


やめようと思い、適当に事情・理由をつけて

「大変申し訳ありませんが…」と返信し始めた。

するとその直後、まだ返信を送らないうちに

そのクライアントからメールが届く。


クライアント「途中下車はできませんよ。いちど請け負ったら最後まで。…でもあなたはもう書く気がないようですね?ではこちらで仕上げますので、あなたにはその通りになってもらいましょう」


その瞬間、パソコンの電源が切れ、

後ろに猛烈な何かの気配を感じた。

振り向くと、黒い人影のような物体が

俺を見下ろすように立っていた。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=O6nCWQn-eZA

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クライアント 天川裕司 @tenkawayuji

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