第5話落とし物

部長は腕を組み真剣な表情で口を開く

「昨日も言ったが、校舎裏に猫が大量発生しているらしい」

「野良猫ですか?」

「わからん」

俺はへぇ、と呟き宝田先輩が入れてくれた緑茶を啜る

「まあとりあえず行ってみた方が早いんじゃないの?」

部長の隣に座っていた宝田先輩は部長の方に近づく

「あぁそうだな、じゃあ真由と一年で行ってきてくれ」

「部長は行かないんですか?」

花塚は不思議そうな表情をする

「俺は考えるのは好きじゃないからな」

それでよく探偵部なんか入る気になったな

俺は緑茶をすべて飲みきり席を立つ

「じゃあ行きますか」

「そうね」

校舎裏には猫と人(大半は女子)がいた

中には猫じゃらしで遊ぶ者や猫を抱き抱える者もいた

「結構人多いね」

「そうだな」

「で、何をするんですか?」

宝田先輩はニコリと笑い頬に人差し指を当てる

「んーまずは聞き込みかな?」

「聞き込みですか」

花塚が疑問をぶつける

「どういうことを聞き込みすればいいですか?」

「どんな些細なことでもいいの自分で考えて聞き込みしてみて」

宝田先輩はニコリと笑う

「じゃあ二手に分かれてやりましょう」


聞き込みは俺と花塚、宝田先輩と龍間、の二手に分かれてやることになった、龍間は何も喋らず首だけ振っていた、そんなことだから友達ができないんだ。

俺たちは近くにいる女子生徒2人をターゲットにした、花塚の友達らしい

「ごめんちょっといい?」

花塚が声をかけた

「あ、凛花じゃんどうしたの?」

女子の1人が振り返る

「隣にいるのは...昨日一緒に帰ってた」

もう1人の女子も猫を抱きながら振り返る

そういえば昨日駅にいたのはこの2人だったような気がする

「もしかして彼氏?」

花塚はハッとする

「いやいやいや違うよ、この人は同じ部活の織田くん」

俺はどうも、と軽く頭を下げる

「あー変な部活に入ったって言ってたもんね。探偵部だっけ、何度聞いても変な部活だよねー」

花塚は友達に探偵部のことを話しているようだ

「そう、その部活の活動で今校舎裏の猫について調べてるの、何か知っていることあったら教えてくれない?」

花塚はニコリと笑いメモを取り出す

「ほんとに、探偵みたいです」

「ウチらも噂を聞いて今日初めてきたからなー」

「ほんとに些細なことでもいいんだけど」

猫を抱えていない方の女子が何かを思いついたような表情をする

「あ、そういえば、なんかこんなものが落ちていたよ」

女子が左手にもっていたステンレスのスプーンを差し出す

「スプーンか?」

「そうスプーン、学校でスプーンなんて使わないでしょ、だから変だなって」

そのスプーンは砂が少しついていたが、特に何かに使った感じはなかった

「そろそろ行かないと」

猫を抱き抱えている女子が猫を下ろしもう1人の女子の袖を少し引っ張り言う

「そうだね、じゃあウチらは用事があるから、

そのスプーン落とし物で届けるか何なりしといてくんない?」

「わかった」

「じゃあね凛花また明日」

女子2人は手を振りながらその場を離れていく

「じゃあねまた明日」

花塚も手を振り2人を見送る

2人が見えなくなったところで花塚に聞く

「スプーンって落とし物で届けた方がいいと思うか?」

花塚はメモをしまい、うーんと考える

「別にいいんじゃない届けなくても」

俺はそうかと答えスプーンについていた砂をはらいポケットにしまう

花塚はえっ、と言い、信じられないとでも言いたそうな顔でこちらを見る

「織田くん、人が使ったかもしれないスプーンをよく直でポケットに入れられるね」

「多分このスプーンは使われていないぞ」

花塚は不思議そうな表情をする

「何でわかるの?」

「スプーンを使えば少しは唾液で湿るだろ、そしたらもっと砂が付くはずだ」

「あ、そっか」

花塚は納得したようだ

「よし、じゃあ次の聞き込みだ」

その近くに四つん這いで、何かをやっている女子生徒がいた、何か落とし物でもしたのだろうか。俺と花塚はその女子に話しかけることにした


「ちょっといいか?」

ジャージ姿の女子が振り返るその女子はいかにもギャルといった見た目だった

「あれ織田じゃんどうしたの?」

「?」

何で俺の名前を知っているんだ、ジャージの色からして一年だが、俺はこの女子と面識がないはずだけど

「織田くん知り合い?」

「さぁ」

「さぁって」

花塚は困り笑顔を浮かべる

ギャルが口を開いた

「さあってひどくない?私あんたの後ろの席なんだけど」

「あー」

そういえば後ろの席にいかにもギャルって見た目の人がいたことを思い出す

「名前なんだっけ?」

「ほんとに覚えてないの⁉︎入学式の時自己紹介したじゃん」

「わるい」

俺は少し申し訳なくなった

ギャルはため息を吐き口を開く

「ウチは加藤美咲よろ〜」

俺たちは自分たちの部活と調べていることについて説明し、ないか知ってることがないか聞いた。

「知らないよ」

「そうですか」

「何か些細なことでもいいんだ、何かないか?」

加藤は少し嫌な顔をする

「ないって言ってんじゃん〜」

俺はそうか、と言う

「話がないならウチはやることがあるから」

「何か落とし物か?」

「うん」

「そうか、見つかるといいな」

加藤は驚いた表情をする

「え、一緒に探してくれるとかじゃないんだ⁈」

「じゃあな」

「え⁈」

俺たちは話を強引に切り上げてそそくさと退散する

「さすがにあれは加藤さんかわいそうなんじゃ?」

俺は苦笑いを浮かべる

「多分落とし物ってイヤリングとかめっちゃ小さいものだろう、そんなもの外で落としたなら見つかるのがいつになるかわからないからな」

花塚は不思議そうな表情をする

「何でそんなこと分かるの?」

俺は真面目な表情で答える

「ただの感だよ」

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