第5話 十歳
七歳……
怪我も良くなり日々、魔力を使い果たしてから寝る事を始める。タマリちゃんとの合戦合気刀術の
八歳……
魔力を使い果たしてから寝るのは継続している。お陰で魔力はかなり上がった。68/79になっている。この調子でドンドン魔力を上げて行くことに。もちろん、タマリちゃんにも魔力を上げる方法を既に教えている。
そして、何故か合戦合気刀術の稽古は基礎から
九歳……
魔力が三桁になった。287はお父さんよりも多い筈だ。お母さんやお姉ちゃんにはまだ負けているけど。そして、聞けばタマリちゃんの魔力は565と村一番になっていた……
この頃にはやっと木刀を持っての合戦合気刀術の稽古が始まった。僕の攻撃はことごとくタマリちゃんにダメ出しされている…… リョーイチ、何処に居るんだ、早く僕を助けてくれ!!
そうそう、コルトくんとモーケンくんだけど、僕が怪我を負ったあの日いらい、周りの大人たちや子どもたちからかなりな叱責を受けてやさぐれてしまったらしい。稽古もしなくなりせっかくのスキルを腐らせてしまっているそうだ。
まあ、僕と顔を合わせないように村長からきつく言われているから僕も噂話で知ったんだけどね。
ヤーラちゃんは八歳から僕のお父さんと一緒に狩りに行ってるんだって。お父さんが真面目でスキルの研鑽にも励んでいるヤーラちゃんをとても褒めていた。
「ヤーラのスキル【天弓】は凄いぞ。狙った獲物に必ず当てるからな。それに、弓矢が必要ないから荷物が少なくてすむのも羨ましいな」
ヤーラちゃんのスキル【天弓】は魔力を練って創り出した弓矢を利用するスキル。なので他の狩人のように弓矢を装備する必要が無いんだって。凄いよね。
そんなヤーラちゃんも狩りに行かない日は僕とタマリちゃんと一緒に合戦合気刀術の稽古に参加しているんだ。近接戦闘も出来るにこした事は無いからね。
そして僕とタマリちゃんは十歳になった……
「急げ! 早く防備を固めろ! 何をしてる!
大人たちが村の防備を固めている。何故ならコルトくん一家とモーケンくん一家が手を組んで魔物寄せのお香を村の周りに村民にバレないように撒いて、自分たちは逃げてからお香に火をつけたから……
自業自得なのに逆恨みしてそんな事をするなんてね……
お香は人には匂わないから気づくのが遅れて、村民の一人が襲われてから村に魔物が近寄って来ているのに気がついたんだ。
魔物の数は周辺の魔物だけだったからおよそ二百体。村長さん、狩人組合が主体となって村の防備を固めているけれど、間に合いそうにない。
そんな中で僕は何をしているかというと……
村の防備の薄い場所に隠れて潜んでいるんだ。今こそ僕のスキルを活かす時だ!
その場所ではヤーラちゃんが、頑張っている。そこに向かって来てるのはゴブリンが五十体。
ヤーラちゃんのお父さんが指揮をとってヤーラちゃんを含めた狩人たちが弓矢でゴブリンを牽制しているけれども、こちらの人数は僅か八人。徐々にゴブリンたちは村に近づいて来ている。
ずる賢いゴブリンらしく仲間の死体を楯にして矢を防いでいるんだ。
僕はこれまでもスキルの研鑽に励んできた。なので今、何が出来るかは把握している。僕は自分の職業を
「なっ!? ローラン! 何をしている、危ない、下がれっ!!」
ヤーラちゃんのお父さんがそう言うけれども僕は二ヘラと笑いヤーラちゃんのお父さんに言う。
「エヘヘ、大丈夫です。僕に任せて」
そう言ってから僕は目に見えるゴブリンたちに対してスキルを発動した。
【
僕の目に見える範囲の空気が失われる。その範囲内に居るゴブリンたちは五秒もしない内にバタバタバタと倒れて死んだ。
はあ〜、魔力を増やしていて良かった。それでも半分ぐらい減っちゃったなぁ。(328/652)
「な、何が起こったんだ? ローラン、お前が?」
ヤーラちゃんのお父さんがそう聞いてきたから僕は頷いた。
「うん、僕がスキルを使って倒しました。他にも手薄の場所はありますか? ここには二人ぐらい見張りを置いておけば大丈夫だと思います」
僕の返事にポカーンとした顔をする大人たち。でもヤーラちゃんだけはシッカリしてたよ。
「ローランくん、西側にオークが来てるの! 三十体も!」
「分かった、ヤーラちゃん、そこに向かうよ」
僕は駆け出しながら大人たちに言う。
「ここと、西側以外に人の配置をし直してください!」
僕の言葉にやっと正気に戻ったヤーラちゃんのお父さんが指示を出していたのを横目に僕は懸命に駆けた。
西側にたどり着く。
オークたちは村の防備を叩いて壊そうとしていた。矢が刺さってもものともしてないよ。
「クソッ! 奴らをこれ以上調子づかせるな!」
防備を任されているのは狩人組合の副組合長だ。僕はその場所から見えるオークに向かってスキルを発動した。今回は
【
だ。アレ? 僕は防備を攻撃してるオークを押して遠ざけて矢が当たりやすいようにしようと思ったんだけど……
オークに穴が開いてるよ。思惑とは違ったけど三十体のオーク全てが倒れたから良しとしよう。
魔力は、まだあるね。(268/652)
よし、次に向かうぞ! 僕は北に向かう。
でもそちらはほぼ制圧完了だった。僕のお父さんが指揮をとっていたみたいだ。そして、来ていた魔物はオークとゴブリンの混成部隊だったようだけど、お姉ちゃんの成長促進によって急激に育ったツル科の植物に足を取られて動けなくなった魔物たちを矢で攻撃したらしい。当て放題だって狩人の人たちが喜んでたよ。
なので僕はそのまま東に向かう。そこでは……
タマリちゃん無双劇がまだ進行中だったよ。
木刀を片手に持ったタマリちゃんがこれでもかとオークたちをぶっ叩いている。
というか逃げ惑ってるんだけど……
深追いしなくても良いんじゃないかな?
それもオークジェネラルが逃げ惑ってるんだよ……
タマリちゃん。君には明日からは何ていう名称が付くんだろうね。
そんなこんなで村を守りきったんだ。襲われて怪我をしていた村民の一人も大怪我だったけれども命を失わずに済んだよ。
村長からは僕のスキルについて
「使えるようになったか。良かったな」
ってだけ言われて、スキルについて聞かれても詳しく話す必要は無いからなと教えてくれたんだ。
それから十日後……
僕、お姉ちゃん、タマリちゃん、ヤーラちゃんが村の広場で辺境伯様代理のお嬢様の目の前で表彰されていた。
「『この勇敢なる四名の子どもたちにより、我が領地に大きな被害なく魔物を退けられた事を本当に嬉しく思う。私からの感謝の気持ちとして、四名には免税措置とそれぞれ五十万ゴルドの謝礼金を支払うものとする』と、父からの言葉です。みんな本当に有難う」
お嬢様は年の頃は十七〜十八歳ぐらいで、とても落ち着いた雰囲気の綺麗な人だ。見惚れてたらタマリちゃんに足の甲を踏まれちゃったよ。
いや、嫉妬してくれてるのは嬉しいんだけどね。
「それと、事を起こした二家の者たちは既に騎士団によって捕らえています。成人は奴隷堕ちで子どもは騎士団にて保護観察となりました。二度とみんなに迷惑をかける事は無いでしょう」
お嬢様の言葉に村民たちから歓声が上がる。まあ、アレだけの事をしたからね。当然の措置だと思うんだ。
こうして、十歳になってから村に起こった事件は解決したんだけど、それによって辺境伯様に目をつけられたのは果たして良かったのかどうか……
心の中で面倒臭いと思ったのはここだけの話だよ。
だってさ、お嬢様がこの村に住む事になったんだから……
お父さんが酔ってお母さんに話してたのを僕とお姉ちゃんが聞いたんだけど、
「何でも村長宛の手紙には辺境伯様から嫁の貰い手の居ないじゃじゃ馬だから丁寧に扱う必要は無いからなって書いてあったそうだぞ、ハハハ!」
って言ってたんだ。僕たちの前で表彰してくれた雰囲気からは想像出来ないよね。
でも、二日後には納得する出来事があったよ……
「私も狩りに行きますわ!!」
とても大きな声で、革鎧に帯剣したお嬢様が狩人組合にやって来たって村中で噂になったからね。
組合長であるヤーラちゃんのお父さんが頭を抱えていたんだって。
ヤーラちゃんが笑いながら教えてくれたよ。何だかこれから賑やかになりそうだよね。
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