第4話 スキルalphabet
僕が目覚めたのに気づいたのはお姉ちゃんだった。ちょうど僕の様子を見に来た時に僕が目覚めたんだ。
「ローラン! 目が覚めたの!? お父さんとお母さんに知らせてくるね!!」
そう言ってお姉ちゃんは出ていったけど、三十秒もしないうちにバタバタと足音がしてお父さんとお母さん、お姉ちゃんが駆け込んできた。
「ローラン! 良かった、本当に目覚めたんだな!」
「ああ! ローラン! 良かったわ!!」
「ローラン、もう大丈夫?」
「うん、心配かけてごめんね。お父さん、お母さん、お姉ちゃん」
僕はまだ少し痛む後頭部に注意しながら三人に謝った。
「大丈夫だ、ローランが元気になってくれる事が一番だからな。それと、モーケンの親には抗議しておいたからな」
えっ!? そんな事して大丈夫だったの? お母さんの作る野菜が売れなくなるんじゃ……
僕は心配になったけど、次のお母さんの言葉で杞憂だったと分かったんだ。
「ウフフ、そうよ〜、副組合長ったら私の可愛い息子に怪我を負わせる子供なんか育てちゃって。ウフフ、もう農業組合には野菜を卸しませんって言ってやったら組合長ともども平身低頭して謝ってきたわ〜。だから安心しなさいねローラン」
うんお母さんが怖い…… 黒いオーラがお母さんから立ち昇ってるよ。そしたらお姉ちゃんまで何故か黒いオーラを発しながらこう言ったんだ。
「そうよ、ローラン。モーケンにはお姉ちゃんが制裁を加えておいたからね。だから安心して休んでね」
な、何をしたんだろう…… お姉ちゃんまで怖い。お父さんも二人に若干引いてるみたいだ。
「ゴホン、まあとにかく今は傷が良くなるまで休むんだローラン。ああ、それとお隣のタマリちゃんが心配してくれて毎日顔を見に来てくれてたぞ。明日もきっと来るだろうからちゃんと感謝の言葉を言うんだぞ」
「うん、分かったよお父さん。それじゃ僕はもう少し寝るね。まだ頭が少し痛いから」
本当は頭の痛みは鈍痛になってたけどスキル【alphabet】の検証をしたくて三人にそう伝える。
「ああ、そうか。ゆっくり休め」
「お腹は空いてない? 起きたら食べられるようにおじやを作っておくわね」
「ローラン、ゆっくり寝て早く良くなってね」
「うん、有難う」
三人が部屋を出ていったから僕はスキルの検証をしようと頭の中でスキルを確認したんだ。
「え〜と、何なに? スキル【
で、僕はそのまま気絶しちゃったみたいだ。気がつけば朝だったからね。職業に就くのはかなりな魔力が必要なみたいだね。レベルが低い今の僕じゃ無理みたいだ。ステータスを確認してもジョブには庶民のままだったし。それにしても、昨日までは魔力が10/10だったのが今みたら8/13になってるよ。レベルが上がった訳じゃないのに魔力って使い切れば上がるんだね。日本のラノベで読んだ通りだったよ。
さて、昨日はワクワクしてたから気がつかなかったけど、今日はやるぞ! この後頭部の鈍痛をマシにしないと。どんな単語を組み合わせたら良いかな? aから始まる単語で痛みは
どっちが良いかなぁ。とりあえず
僕は頭の中で
「うわっ!! これでも魔力がごっそり持って行かれたや!?」
慌ててステータスを確認したら2/13になっていた。今ので6の魔力を消費したんだね。それでも後頭部の痛みが気にならないぐらいになったからホッとしたんだ。
けれども魔力を上げないと安心して使えないや。怪我が治るまではベッドの上だから、夜には魔力を使い切って寝る事にしよう。そしたら魔力が少しは上がっていくだろうし。
そこまで検証した時にお母さんがノックをして部屋に入ってきた。
「ローラン、調子はどうかしら? タマリちゃんがお見舞いに来てくれてるわよ?」
「お母さん、おはよう。うん、昨日よりマシになってるよ」
「まあ、それじゃタマリちゃんに入って貰うわね」
僕はドキドキしながらタマリちゃんが部屋に来るのを待った。
「ローラ…… ローくん! 大丈夫!」
今、ローランって言いそうになったよね。良かった、アヤナの記憶を思い出してくれてるんだね。
「うん、タマリちゃん。僕は大丈夫だよ」
嬉しくてつい前世と同じように二ヘラと笑ってタマリちゃんに言う僕を見て、タマリちゃんもホッとした顔をした。どうやら僕が前世の記憶を思い出していることに気づいてくれたみたいだ。
そう、タマリちゃんが前世のアヤナだったんだ。良かった、ちゃんと巡り会える場所に居てくれて。でも、それならリョーイチも何処かで転生してないかな? そしたら完璧なんだけどな。
またリョーイチと二人でOtaku道を邁進してみたいなぁ。
そんな事を考えていたらタマリちゃんがジト目で僕を見ていた。記憶を思い出す前のタマリちゃんなら絶対にしない目つきだ。
そんな僕たちを見て大丈夫そうだと思ったお母さんは仕事に戻るわねと言って畑に向かった。
二人きりになった途端にタマリちゃんがアヤナの口調になって僕を責めたよ。
「ローラン! やっと会えたのに兄貴の事を考えてたでしょ!!」
「アヤナ、今は七歳なんだから口調を元に戻さないと」
やっと出会えた僕たち二人は結婚していた時に気持ちが戻っていたんだ。まだ体は七歳なんだけどね。心が大人だから。
「ああ! ローラン! 本当に、本当に会えたなんて!! 神様に感謝するわ!」
「僕もだよ! アヤナ。いや、タマリ。どうか今世でも僕と結婚して欲しい!」
「もちろんよ、ローラン。今度こそ、一緒に穏やかに年をとりましょう!」
「うん、末永くよろしくお願いします」
それから二人で話をした。前世の娘や息子の話を聞いて僕は誇らしく思ったよ。
それからリョーイチの話も聞いた。
「兄貴はね、ローランが亡くなった後にこう言ったんだ。『アイツなら間違いなく転生してる筈だ! だから俺もアイツに負けずに転生して見せる!!』って。本当に聞いた時にはこのバカ兄貴って思ったけど、現実にローランが転生してるから、兄貴もここじゃなくても何処か別の世界にでも転生してるかもね」
そうだね、なんたってリョーイチだからね。
「あり得そうだね。できたらこの世界に転生していて欲しいなぁ」
「もう! ローラン! また兄貴とオタク活動をするつもりでしょ!!」
「ハハハ、人生に趣味は必要だよタマリ」
「そんな事をいってもダメよ、ローラン。ここにはラノベもアニメも無いんだからね!」
「だから、僕とリョーイチで作りたいと思ってね。アニメは無理でも小説や漫画ならイケるだろ?」
そんなやり取りをしながらこれからの事も話し合う僕たち。とりあえず口調は人前では子供口調でと決めて、それから僕のスキルの事も話して、私の所為でと落ち込むタマリに、いやいや制限付でもチートだからと納得させて。
そして話合いがある程度落ち着いた時にタマリから提案が……
「ローラン、怪我が治ったら私と一緒に合戦合気刀術の基礎稽古を始めましょうね。コルトやモーケンごときに後れを取るようじゃダメよ。前世のローランだったらあの二人ぐらい簡単にいなせた筈よ」
うん…… まあタマリ(アヤナ)にしてみたらそう思うのも無理は無いと思うんだけど。でも二人にヤラれてた時は前世の自分を思い出して無かったからね。そこを考慮してくれないと。
「フフフ、分かってる。でも本当に基礎稽古から始めましょう」
う〜ん…… リョーイチ、助けて! 僕は知っている。リョーイチが凄く強かったのを! そして、そんなリョーイチが唯一敵わなかったのがタマリ(アヤナ)だった事を…… 厳しいんだよね、タマリ(アヤナ)の稽古は……
でもここで頷いて了承しておかないと後が怖い。だから、僕は素直に頷いてお願いしますと言った。
うん、怪我の治りが少しでも遅いと良いなぁなんて思ったよ……
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