第3話 覚醒
その事件は僕たちが七歳になった時に起こった。
その日も二人に稽古と称したいじめを受けていたんだけど、モーケンくんが新しい派生スキルに突然目覚めて、僕はそれを躱しきれずにまともにお腹に食らってしまい、大木に叩きつけられたんだ。
その時に後頭部を強く打ち付けて、僕は意識を失ってしまったんだ。
目が覚めたのはそれから三日も経った時だった。
で、気絶してる三日の間に僕は長い、とても長い夢を見ていたんだ。
夢の中で僕はここじゃない国で貴族で伯爵位。名前はローラン·アンドルーズだった。
産まれた時から三十八歳で亡くなるまでの間を夢の中で追体験したんだよ。そう、追体験だ。その夢は前世の僕だったんだから。
前世の僕は英国という国で伯爵家の嫡男として産まれた。順調に成長していた僕に、五歳の時に多大な影響を与えたあるモノがあった!
そう、ジャパニーズアニメーションだっ!!
始まりは父上が見せてくださったロボットアニメだった。そこからの僕は日本のアニメだけじゃなく文化芸能、武術、食事、ありとあらゆるモノにハマっていき、気がつけば日本の友人たちから【
そして僕は日本に頻繁に出かけていった。気づけば父上に直訴して留学までしていたんだ。
初めはハイスクールの頃にホームステイだったよ。そこでホームステイ先の
生涯の友は本俵家の長男であり、僕の一つ年上の
リョーイチは凄かったよ。合戦武術合気刀術を幼い頃から学んでいたから強かったのはもちろんなんだけど、僕よりもOtakuだったんだ。僕は自分のOtakuに自信があったんだけど、リョーイチには敵わないとその時に思ったんだ。
でも直ぐに追いついてやったけどね。
伴侶となってくれたのはリョーイチの妹で当時十二歳だった
キッカケは僕が東大に合格して卒業する年の事だったんだ。
僕はアヤナに告白されたんだ。そして、その頃には僕もアヤナを女性として好きになってしまっていたんだよね。
けれども英国紳士たれと育った僕は女性からの告白を良しとしなかった。
「待って、アヤナ。君はまだハイスクール生だ。君がハイスクールを卒業する来年に僕は必ず迎えに来る。その時にアヤナの気持ちが変わっていなければ結婚しよう!!」
そう言ってその時はアヤナに一年も待って貰う事になったんだ。一年後、アヤナの卒業式の日に僕はジャパンに飛び、そして校門前で英国紳士らしく跪いてプロポーズしたんだ。
リョーイチの監視の元にだけどね。そのまま攫って英国に飛びそうだと思われてたみたいでね……
ジャパンで本俵家のご両親とも会って結婚の承諾を貰い(とてもアッサリと認めてくれたよ)、僕とアヤナは英国に行き、僕の両親に会ってなんとその日の内にウェディングだったよ。
その時の父上と母上と妹が僕のアヤナに言った言葉が……
「ほ、本当にこんなOtakuな息子で良いのかい、レディ·アヤナ?」(父上)
「まあ! まあまあ!! 何て可愛らしい、お嬢さんなの!! 育て方を間違えたと思ったけれども、こんな素敵なお嬢さんを捕まえて来るなんて!! どうかローランをよろしくね!!」(母上)
「お
僕の家族はちょっと僕に対する評価が低かったんだよね。でもアヤナは笑顔で僕の家族に挨拶きてくれたよ。ちゃんと僕を立ててね。幸せだった。
翌年に長女が産まれて、その二年後に長男も産まれた。その頃には父上から爵位を引き継いで、僕も英国王室の中で働いていたんだ。
そんな僕が三十七歳の時にガンだと診断された。若かったのもあるだろうけど、ガンはどんどん転移していき、三十八歳で僕はあえなく亡くなったんだ。
でも、夢には続きがあった。きっと神様の計らいだと思う。僕が亡くなった後にアヤナは再婚せずに僕の妹の伴侶に爵位を引き継いで貰っていた。
アヤナと子どもたちは離れに住み、アヤナは町で仕事に出ていた。妹もその伴侶もそんな事をしなくても良いってアヤナには言ったみたいだけど、アヤナは子どもたちに働いてお金を稼ぐ事の大変さを知って貰いたいからって、働くのをやめなかったみたいだ。
そして、僕の長男が成人した年に妹の伴侶は僕の長男に爵位を引き継いだ。
アヤナが何故と聞くと、アヤナから話があった時に妹と相談して元からそうするつもりだったと言ってくれた妹と義弟に僕は夢の中だけど感謝の念を送った。
「アレ? 今、兄さんの……」
「レミーも感じたのかい? 僕も
二人してそんな事をアヤナの前で言い出したらアヤナが僕に対して怒り出したよ!!
「何で二人には送って私には何もないのよ! ローラン!!」
日本語だったから僕しか理解してなくて良かった。でも、夢だけど届くならばと僕はアヤナに最大限の愛と感謝を込めて念を送ったんだ。
「あ、ああ、ローラン…… どうか見守っていてね…… 私があの子たちと共に幸せに過ごす日々を……」
良かった、届いたみたいだ。それからは長男が義弟の補佐を受けながら爵位に相応しい振る舞いを身につけていったり、長女が二十五歳で知り合った職人と結婚したり、義弟は長男がもう大丈夫と分かったら身を引こうとして長男に懇願されて
長男の結婚も見れたし、長女や長男夫婦の間に産まれた孫の顔も見れたし、アヤナはそのまま生涯独身を貫いて、八十八歳で亡くなったのを見届けたんだ。
で、夢の中なのに僕の目の前にアヤナがいる。若い頃の姿に戻ってね。
『ああ、ずっと見守ってくれていたのね、ローラン。有難う。どうかしら、私かなり頑張ったわ』
『うん、僕の奥さんは世界で一番の肝っ玉母ちゃんだったよ!!』
『ウフフフ、それって褒め言葉なの、ローラン?』
『最大級の褒め言葉だよ! アヤナ!』
『有難う、ローラン…… 私ももう行かないと…… いつかまた、巡り会えたなら…… ううん、それは今のローランには関係ないものね。でも、本当はあなたと一緒に穏やかに年を取りたかったのよ…… 何処かで叶うといいなって今でも思ってる…… いつか、また、ね、ローラン』
『ダメだ! 今からでも遅くないよ! アヤナ! 僕もアヤナと一緒に行く!!』
『ダメなの、ローラン…… それは許されてないのよ……』
僕は泣きながらアヤナに縋り付く。そこに声が響いたんだ。
『汝、アヤナと共に過ごしたいか? ならばスキルに制限をかける事により共に過ごせるようにしてやれるが、いかがする? 制限をかければ汝のスキルは使い勝手が悪くなり、またバカにされる日々が続くやも知れぬが、それでも愛を選ぶか?』
僕はその問いかけに全力で答えた。
『もちろんだ!! 僕がバカにされる事なんて何のことはない!! アヤナと共に過ごせるならば、そんな事はどうでもよい事だっ!!』
『汝の答え、しかと受け取った。ならば目覚めよ! しからば我の言葉が真実だと分かるであろう!』
そこで僕は夢の中なのに気を失ったんだ……
そして、ベッドの上で目覚めたんだよ。
「痛っ! う〜…… ズキズキするなぁ。モーケンくんのあの薙ぎ払いは強烈だったな……」
って…… アレ? 夢? いや……
「ローラン·アンドルーズ!! そうだ! 僕は!?」
そこで僕は覚醒したんだ。前世の記憶と授かったスキルに!!
それから、アヤナが何処に居るのかも!!
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