第7話 「わたしの夢、応援しててね?」
「……ダミへさん。わたし、純情なんだって」
入鳥が居なくなって、アナタと鳥取だけが残された部屋。鳥取の呟きは、唐突に行なわれた。
「くふっ……。ミャーちゃんってば、ほんと、可愛い……よね? わたしがヘッドホンしたままおトイレに行ったの、気づいてないんだもん。だから、さっきの独り言ぜーんぶ、聞こえちゃった♪」
おかげ色々と捗ったけど。そう語る鳥取の声は、普段のオドオドとした雰囲気はなく、どこか妖艶だ。
「中学の時から、ずぅっとそう。アレでわたしを好きなこと、ごまかせてるわけ、無いのにね? 純情なのはどっちなのって話。それに変態なわたしの言葉を理解できない
そこで、机の上にいたあなたのことを抱えあげた鳥取は、
「──推さずにはいられないよね♪」
囁くようにして、笑みを含んだ声でアナタに話しかける。
「ダミへさん。ミャーちゃん、わたしにお友達作って欲しいんだって。わたしのこと、好きなくせに」
言いながら、抱き枕のようにそっとあなたを胸に抱く。
「わたしはミャーちゃんさえいればいいのに。ミャーちゃんだけでいいのに。……なのになんで、あんなひどいこと、言うのかな?」
ゆっくりと鳴る鳥取の心臓の鼓動が聞こえる。
「ミャーちゃんは、心配じゃないのかな? わたしが他の子を好きになるの」
話しかけるというよりは、独り言として。疑問を言葉にする鳥取。
「わたしは心配……。ミャーちゃん運動神経も良いし、頭もいいし。しかも可愛いから、モテるもん。わたし、ずっとミャーちゃんのこと見てたから、知ってるよ? 小学校から今まで、11人の子に告白されてるの。しかも2人は女の子。でも興味がないから、他に好きな人がいるからって、断ってるよね?」
何かをこらえるように、鳥取がアナタをギュッと抱きしめる音がする。
「そのたびに、わたしは不安になるよ。いつかミャーちゃんが、わたし以外を好きになるんじゃないかって。ダメダメなわたしに見切りをつけて、どこかに行っちゃうんじゃないかって。不安になる」
鳥取がベッドの上で体勢を変える音がする。
「こんなダメなわたしから、変わりたい。……でも、わたし、器用じゃないから。人前に立つと緊張してどもっちゃうし、挙動不審になるし、あと……今もこうやって好きな人の枕を嗅いで落ち着いちゃう……むしろ興奮しちゃう変態だし……」
そこから何度か、枕に顔を埋めて深呼吸する音が聞こえてくる。途中、枕の中で「あー……。ミャーちゃん麻薬、脳とお腹に効くぅ〜……」という、かすかな呟きも聞こえた。
「……でもミャーちゃんは、変わろうと頑張ってるわたしが好きって言ってくれた。わたしが頑張ってる限りは、きっとミャーちゃんも好きでいてくれる……よね?」
最後の部分は枕から顔を出し、ダミヘであるアナタに真正面から問いかけてくる。
「だから、わたし、頑張るね。ミャーちゃんにもっともっと好きになってもらって。他の子になんか目移りできないくらい、好きになってもらって。それから、言ってもらうの。顔を赤くして、何回も、何回も口ごもって。それでも……」
楽しそうに、嬉しそうに。鳥取はアナタに向けて、夢を語る。
「『柑奈が好き』って。完ぺきで純情で
アナタを抱えた鳥取が、ベッドから起き上がる。そのまま鳥取の息遣いが近づいてきて──
「わ、わたしの夢、黙って応援してて……ね?」
──ゆっくり、ねっとり。そんな言葉がピッタリの声色のまま、あなたに囁きかけてくるのだった。
「ただいま、柑奈。お茶を淹れ直すついでに、お茶請けも用意してきたわ。耳かきの前に、休憩がてら一緒に食べましょ?」
「わざわざありがと、ミャーちゃん! お茶は緑茶だけど、このお菓子は……?」
「知らない? 京都名物で『おこし』っていうの。穀物を飴で固めたものよ」
「な、名前だけはASMRで知ってる! これが、本物なんだ……。四角くて、細長い……。大きさは、3口で食べられちゃうくらいだね」
「そうね。そして、あたしがここにコレを持ってきたということは……?」
不意に、あなたの耳もとでサクッというかる音が鳴る。続いてガリガリと、硬いものを噛み砕くような音がした。
「う〜ん、やっぱり、良い音! もう一口」
「あ、待って、ミャーちゃん。今、ヘッドホンするから……」
再び、入鳥がおこしを咀嚼する軽やかな音がする。
「コレが、推しがものを食べる音……。な、なんか、ちょっとエッチだね?」
「そ、そんなことないでしょ!?」
「ううん、そんな事あるよ。じゃあわたしが食べるから、ミャーちゃんも聞いてみて」
「うん、良いけど……」
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