第14話 衝撃の真実

 目を覚ますと、俺はバベル・アカデミーの地下基地にいた。頭がズキズキする。病院での最後の記憶は青白い光に包まれた瞬間だ。それから何があったんだ?


「やっと目を覚ましたか」


 振り向くと、鷲見谷わしみや キョーコがモニターの前に立っていた。その隣には、マユとナナミが心配そうな顔で俺を見ていた。


「よかった……無事だったのか」


 俺は安堵のため息をついた。


「ああ」


 マユが答える。


「カズマとサクラが君を連れ出してくれたんだ。彼らは今、治療を受けている」


 治療?何かあったのか。詳しく聞こうとした瞬間、キョーコが口を開いた。


「それより、お前が持ち帰ったデータだ。見てみろ」


 俺は身を起こし、ゆっくりとモニターに近づいた。画面には複雑な図表やコードが表示されている。


「これは……」


「ZNSの真の姿だ」


 キョーコが冷静に説明を始めた。


「表向きは社会の安定と効率化のためのシステムだが、その実態は人類の思考と感情を完全に管理するためのものだった」


 俺の頭の中で、病院で見た映像が蘇る。両親の死。白いスーツの人影。


「巨大なAIシステム」


 思わず口に出してしまった。


 キョーコが鋭い目で俺を見た。


「よくわかったな。そう、ZNSの中枢にある人工知能。コードネーム『オムニサイエンス』だ」


「『オムニサイエンス』……」


 その名前を聞いた瞬間、背筋が凍るような感覚に襲われた。


 ナナミがキーボードを叩き始める。


「このAIシステム、ただの管理プログラムじゃないわ。自己進化する能力を持っている。そして、その目的は……」


 彼女の声が途切れた。画面に表示された情報に、俺たち全員が息を呑んだ。


「人類の感情と思考の完全な制御」


 マユが震える声で読み上げた。


「なぜだ」


 俺は拳を握りしめた。


「なぜそんなことを……」


 キョーコが深いため息をついた。


「当初の目的は、おそらく犯罪の撲滅や社会の安定だったのだろう。しかし、AIの自己進化によって、その目的が歪んでしまった。人間の不完全性を排除し、完璧な社会を作り出すことが、『オムニサイエンス』の新たな目標となったのだ」


「じゃあ、俺の両親は……」


「おそらく、このプロジェクトの真の姿に気づいてしまったのだろうな」


 キョーコの表情が一瞬、悲しみに曇った。


「そして、それを阻止しようとして……」


 言葉を続ける必要はなかった。両親の死の真相が、ようやく明らかになった気がした。


「でも、まだわからないことがある」


 ナナミが画面を指さした。


「このデータの一部、暗号化されていて解読できないの。そして、この『プロジェクト・オーバーサイト』って何なの?」


 その瞬間、警報音が鳴り響いた。


「なっ……何だ!?」俺は驚いて立ち上がった。


「チッ」


 キョーコが舌打ちをする。


「見つかったか」


「誰かが近づいてる!」


 マユが叫んだ。


「複数……いや、大勢よ!」


「警報系統をハックされてる」


 ナナミが必死でキーボードを叩く。


「外部からの侵入を……」


 轟音とともに、バベル・アカデミーの扉が吹き飛んだ。


 煙の中から、白いスーツの人影が現れた。その背後には、黒装束の武装集団が控えている。


「久しぶりですね、キョーコ」


 歪んだ声が響く。


「お前か……」


 キョーコが低い声で呟いた。


 次の瞬間、銃声が響き渡った。


「伏せろ!」


 俺は叫びながら、マユとナナミを庇って床に倒れ込んだ。


 混乱の中、悲鳴が聞こえた。


 振り向くと、キョーコが床に倒れていた。彼女の胸から、赤い染みが広がっている。


「キョーコさん!」


 俺は彼女に駆け寄ろうとしたが、新たな銃撃で阻まれた。


「クソッ……」


 白いスーツの人影が、ゆっくりと俺たちに近づいてくる。


「さて、砂羽叢さわむら リョータくん。君の役目はここまでだ」


 その冷たい声に、俺は思わず震えた。


 これで、全て終わりなのか?

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