第13話 潜入!ZNS管理病院(後編)

 意識が戻った時、俺は病院の廊下に横たわっていた。頭痛がする。あの青白い光は一体何だったんだ?


「リョータくん!大丈夫?」


 耳元でマユの声がする。


「ああ……なんとか」


 俺は体を起こしながら返事をした。周りを見回すと、周囲を警戒するカズマが俺の隣に立っていた。


「お前、結構な時間気絶してたぞ」


 カズマが言う。


「俺が屋上に到着した時には、お前はそこで倒れてた。映像に映っていたあの白いスーツの奴は姿を消していた」


 状況を把握しようとしたが、まだ頭がぼんやりしている。


「他のみんなは?」


「サクラは今も正面玄関で患者のふりをしている。ナナミはハッキングを続行中だ」


 マユが説明する。


 俺は立ち上がり、深呼吸をした。


「よし、任務を続行しよう。目標のサーバールームまでどのくらいだ?」


「このフロアの奥にエレベーターがある。そこから地下3階に降りれば、サーバールームだ」


 カズマが答えた。


「わかった。行こう」


 俺たち2人は慎重に廊下を進んだ。病院内は不気味なほど静かだ。


「おかしいな……」


 俺は呟いた。


「警報が鳴ったはずなのに、なぜこんなに静かなんだ?」


「ナナミが警報システムをハックしたわ」


 マユが説明する。


「今は偽のアラートで別のフロアに警備を引き付けている」


 さすがナナミだ。俺は内心で彼女に感謝した。


 エレベーターに到着すると、カズマが制御パネルを開け、ワイヤーを接続した。


「ナナミ、エレベーターの制御を頼む」


「ええ、了解」


 ナナミの声が通信機から聞こえる。


「……よし、制御完了。地下3階まで一気に降下するわ」


 エレベーターが動き出す。緊張で手に汗をかく。


 突然、エレベーターが急停止した。


「どうした?」


 俺は焦って声を出した。


「まずいわ」


 ナナミの声が慌ただしい。


「エレベーターのシステムに別の介入が……」


 その時、エレベーターの天井が開き、白いスーツの人影が降りてきた。


「また会えましたね、リョータさん」


 歪んだ声が響く。


 俺は反射的に【サイバーシンクロ】を発動させた。エレベーターのシステムに意識を飛ばす。


「カズマ!奴を頼む!」


 俺は叫んだ。


 カズマが素早く動き、白いスーツの人影に体当たりをした。


 俺はエレベーターのシステムを必死で制御しようとする。複雑な暗号が次々と現れる。これじゃあまるで生きているようなシステムだ。


「くそっ……」


 歯を食いしばりながら、俺は暗号を解読していく。


 カズマが白いスーツの人影と格闘を続ける中、俺は最後の暗号を突破した。


「よし!」


 エレベーターが再び動き出す。白いスーツの人影は驚いた様子を見せるも、それ以上こちらに干渉せず、天井の穴から脱出していった。


「全員、無事か?」


 俺は息を切らしながら確認した。


「なんとかな」


 カズマが答える。


 エレベーターは地下3階で停止した。扉が開くと、目の前に巨大なサーバールームが広がっていた。


「ここか……」


 俺は呟いた。


 サーバールームの中央に、他のサーバーとは明らかに異なる、黒い筐体のサーバーがあった。


「目標は黒い筐体のサーバーだ。1台だけ見た目から違うはず」


 マユの声に、俺たちは急いでそのサーバーに近づいた。俺が【サイバーシンクロ】を使ってデータにアクセスしようとした瞬間、衝撃的な映像が脳裏に浮かんだ。


 両親の死の瞬間。そして、その背後にいた白いスーツの人影。さらに、その奥に見えた巨大な人工知能システム。


「これは……」


 俺は言葉を失った。


 突然、警報音が鳴り響いた。


「リョータ!」


 ナナミの声が緊急を告げる。


「大量の警備兵が地下に向かっているわ!急いで!」


 俺は急いでデータをコピーし始めた。しかし、ダウンロードの進行が遅い。


 足音が近づいてくる。


「急げ!」


 カズマが叫ぶ。


 95%...96%...97%...


 ドアが開く音がした。


 98%...99%...


「動くな!」


 警備兵の声が響く。


 100%。完了だ。


 その瞬間、俺の視界が再び青白い光に包まれた。


 意識が遠のく中、俺は確信した。これは単なる病院への侵入じゃない。俺たちは、想像を絶する巨大な陰謀の糸口を掴んでしまったのだ。


 そして、その中心にいるのは……。

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