友をなくした瞬間!

崔 梨遙(再)

1話完結:700字

 その頃、僕等は30代前半から半ばだった。知人の馬男君は、転職に成功し、その勢いで結婚。新婚生活中で、幸せの絶頂だと思っていた。


 或る日、新婚の馬男君と飲みに行った。すると、馬男君は言った。


「俺、もっと金持ちの女と結婚したら良かった」


 その瞬間、馬男君が僕の友人ではなくなった。ただの知人になった。


「なんで?」


 一応、理由を聞いてみた。


「これから子供がほしくなるやんか」

「ほんで?」

「生まれたら2人目がほしくなるやんか」

「ほんで?」

「子供が2人もできた頃には、家がほしくなるやんか」

「ほんで?」

「これから、かなり金が必要になるやんか」

「ほんで?」

「金持ちの女と結婚した方が良かったやろ?」

「……」


 僕は、金が必要なら、“必要なだけ、俺が稼いでやる!”くらいの言葉が聞きたかった。古いかもしれないが、金銭的なことに関しては男が頑張るものだと思っている。今の馬男の立場は、男の甲斐性の見せ所だと思った。なのに、自分の稼ぎ以外のものを期待している。男なら、自分の稼ぎのことを考えてほしかった。


 しかも新婚、“好きだから、愛しているから結婚したんじゃなかったのか?”、僕は不思議だった。好きになったら、その女性が金持ちだろうが貧乏だろうが関係無い。僕は聞きたかった。“相手を好きになって結婚したんじゃないの?”と。金持ちだろうがそうではなかろうが、好きな相手と結婚してたら、こんなことは言わないはずだ。何故、好きでもない女性と結婚した?



 嫁に(金銭的に)依存したいという気持ち、嫁のことを特に好きではなかったとしか思えない言動。こんな奴は男らしくない。こんな奴は友人じゃない。こうして、僕の友人がまた1人減った。こんな風に、友人が減って知人が増えていく。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

友をなくした瞬間! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る