第5話 犠牲者の末路
「りゅう! りゅーちゃん!!」
男性が救急車に乗せられる瞬間が目に入る。腕も首もかさかさと乾燥して、皮がむけていた。彼があのままミイラになるイメージが頭に流れてくる。
『どうやら本当に、君はそのマンションにカワギを連れ帰ってしまったようだね』
「そんな……」
『このままではマンション全体にカワギの被害が広がるよ』
どうしよう、俺の所為で、マンション中がミイラになってしまうかもしれないなんて……。あの噂は本当だったんだ。
「きゃあ!!!」
「!?」
叫び声が聞こえる。視線を向けると、先ほどの女性が頭を抱えて座り込んでいた。なんだか様子がおかしい。何かを言っているようだ。
「喉が、カラカラ……た、たすけーー」
そういった途端、女性の肌が急に乾燥してシワがよる。体はゆっくりと地面に倒れじ込んだ。
「大丈夫ですか!? しっかりしてください!!」
救急隊員の人が話しかける間にも女性はずっと苦しんでいる。そして、一際大きくもがいた後に、ぴたりとその動きを止めた。不自然な静寂がその場を包んでいる。
「な……っ!」
女性に寄り添っていた救急隊員は女性の首や手首、胸元を何度も確認して目を大きく見開く。そして他の隊員に警察を呼ぶように指示した。
女性はその場で息を引き取ってしまった。
「そんな……」
軽はずみでとった自分の行動が死を招いたことに絶望する。そしてこれは他人事ではない。俺の家族や俺自身もああなる日が来るかもしれないんだ。手が自然と震える。すがるようにスマホを強く握った。
「お、オカルトお兄さん……どうにかする方法はない? 責任が俺に来てもいい。このままじゃ大量に死者が出ちゃうよ」
そう言うと、浮かれたような息遣いが電話口から聞こえた。ああ、この状況をオカルトお兄さんはすごく楽しんでいるみたいだ。恐怖が勝って怒りも生まれない。それに彼はいつもそうだからもう慣れてしまっている。
オカルトに精通しすぎると、他者の死なんてそんなに大事ではなくなるのかもしれないと俺は思い始めた。
でもなんだかんだ言って、オカルトお兄さんは毎回解決策を考えてくれていた。だから今回も、なんとかする方法を教えてくれるはずだ。俺は息を呑んで、彼の言葉を待った。
『ーー……が、メー……をもうい……』
「オカルトお兄さん、電波悪い!? よく聞こえない!!」
しかし急に電話の向こうからの声が聞こえなくなる。どうしてだろう? 今までしっかりと聞こえていたのに。何か意味があるのだろうか?
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