第4話 カワギの実態
『う〜ん、ちょーっとマズイことになっちゃってるかも?』
「え、そうなの?」
『依頼人の人は、カワギがおうちのお風呂に来た後のことを全部は知らないようだからね、当然君もそうなってしまった』
「おうちに来たら、お風呂の壁を乾かして……その先があるってこと?」
『そゆこと。カワギが家に来たら、まずは壁の一部が濡れなくなって、その範囲が広がる。そして風呂の壁が濡れなくなったら、今度は部屋の主から水分を奪うんだ』
「……え」
部屋の主から水分を奪う? 俺は首を傾げた。
『やがて水分を吸い尽くされ、その人間は死に至る。最後にはミイラみたいになるんだよ』
「ミイラって、本当に?」
『ああ。そうだね。聞けば典太くんはカワギを家に呼ぶ条件をクリアしている。確かマンション住みだったっけ?今頃どこかの部屋でーー』
「ちょっとまって、サイレンの音が聞こえる……救急車の」
俺はスマホを少しだけ耳から離した。だんだんと近づいてくるサイレンの音。それがすごく近くで音を止める。ドクン、と心臓が鳴った。
「うちのマンションの近くで止まった……かも」
『ああ、それじゃあもう手遅れかな……』
「いやいや、他のマンションとかかもしれないじゃん!」
俺は聞こえたサイレンに嫌な汗を流しながら玄関の扉を開けた。そしてその緊迫感に思わず足を止める。俺の部屋の二つ隣の部屋の扉が開いていた。そこからギョロリとした目で女の人がこちらを見ている。
「い、急いでください!! このままじゃ……!」
俺が扉を開けた後ろから救急隊が女性の部屋に入って行った。邪魔になるから扉を閉めるように言われる。扉を閉める途中で運ばれるストレッチャーが見えた。そこには、乾燥し切った肌で自身を抱きしめるように縮こまる男性がいる。乾いた唇の隙間から、掠れた声が漏れていた。
そこでやっと、電話の声に気がつく。
『ちょっと、典太くん、聞こえてる?』
「うちだった……多分水分を取られた人が、運ばれてってる」
『あちゃー』
重く考えていないようなオカルトお兄さんの声を遠く聴きながら、俺はロビーに降りた。今は少しでも情報が欲しい。
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