第3話 相談
久々の広い湯船に浮かれ、俺は他の湯と露天風呂を楽しんでそのまま家に帰った。長い間湯船に使っていなかったせいか、満足するまで早かった気がする。
「うーん?」
あの銭湯に行ってから数日が経つ。家の風呂に変化はない。やはり銭湯の壁が乾いていただけの偶然だったか。ただ、あの時の俺は十分気分が昂っていたので、別に悪い気はしない。依頼人にはただの噂だったと連絡を入れよう。そう思いパソコンを開く途中でふと手が止まる。
「そういえば、先に聞いておくかな」
俺はメールを開く前にスマホを取り出して、通話アプリのお気に入りからある連絡先を押した。変わった音のコール音、きっちり3コールで相手は出てくれる。
『はいはーい。こんにちは! オカルトお兄さんでーす!』
「こんにちは、またお兄さんだったか〜」
『やあやあ典太くん。今日はどうしたんだい?』
俺が唯一信頼を置くオカルト相談電話。なんと一時間百円でオカルトの相談に乗ってくれる。一時間も話すことは基本ないけれど、正直時給どうなっているんだって感じだ。そして俺が電話するときは必ずこのオカルトお兄さんが電話に出てくれていた。二十四時間受け付けている電話窓口だし、従業員も複数いるって聞いているけど、どんな時間にかけてもお兄さんが出てくる。もうあまり気にしなくなってきたところだった。
「早速本題なんだけどさ、カワギって怪奇現象について調べててさ」
俺は依頼内容と俺が実行したところまでをオカルトお兄さんに話した。最初は軽かった相槌は段々と重みを増していく。なんだか不穏な空気になってきたと感じた。……なんだろう? 何かマズかったのかな……?
『あのねぇ……典太くん。なんで実行する前にお兄さんに相談してくれなかったの?』
「なんでって。だって噂程度の話だったしさ」
『う〜ん、ちょーっとマズイことになっちゃってるかも?』
「え、そうなの?」
俺はスマホを耳に当てながら身を乗り出す。お兄さんの声色的に本当なのかもしれない。俺は続きを促した。
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