先輩の長い髪

月鮫優花

先輩の長い髪

 僕、先輩の長い髪が好きだったんですよ。

 どこにいても一際目立つ、誰よりも長い髪。サラサラとしていてツヤのある長い長い黒髪。

 しかも先輩は快活かつお淑やかで、人望があって、よく人に囲まれていましたよね。僕、先輩の幼馴染なんだからって言われて、少しちょっかいかけられたりもしましたよ。

 そういう人たちの間でも、やっぱり話題になるのはその綺麗な髪のことでした。どうやって手入れしているのか、とか。どうして伸ばしているのかとか。

 好きな人の気を惹くために伸ばしてる、って言ってましたっけ。「昔からの付き合いで、ちょっと鈍いところもあるけど、よく自分のことを見てくれてるやつなんだ。」って。

 それで、今日、先輩がショートカットにしてるの見た時、びっくりしちゃいました。ああ、すみません。似合ってないとかじゃなくて。むしろ、すごく似合ってはいるんですよ。ただ、びっくりしました。何かあったんですか?まあ、話したくないなら、いいんですけれど。

 改めまして、今日は僕の結婚式に来てくれてありがとうございました。嬉しかったです。それではまたどこかで。お元気で。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

先輩の長い髪 月鮫優花 @tukisame-yuka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画