第二十三話 ウルスラ衝撃の新事実

 バルとナリさんが結婚するという話は、小さな街なので瞬く間に街中へ広がってしまいました。

 隠すことでも無いのでビーチェがベラベラと喋っているんですね。

 仕入れ先の酒屋や肉屋などへ。また店でも常連客に話しているものだから、ある者は共に喜び、またある者は嘆いて酒を浴びるように飲んでました。


「いやあ! めでたいめでたい! お似合いの二人だよっ おめでとう!」

「おめでとう! ひゅーひゅー」

「ナリさん再婚出来て良かったなあ! 俺っちも安心したよ!」


「どうもどうも! ふふふっ」


「まだ挙式の日取りは決まらないのかい?」


「先日プロポーズしたばかりでねえ。何も決まってないよ」


「本当に惚れたて熱々なんだ。ひっひっひ」


 常連客の三人グループがビールジョッキを乾杯のポーズで、バルとナリさんを祝福していました。

 ナリさんは恥ずかしくなって縮こまりながらバスタを茹でています。

 もう一人の常連客は店の片隅のテーブルで、ナリさん特製のカルボナーラ大盛りを食べ、ビールをしみじみと飲んでいました。


「――わかってた。わかってたんだ…… でも俺にもチャンスがあるのかなあとちょっと思ってたんだよ。悔しいなあ」


 周りの客は彼に声を掛けづらく、哀れんだ目で見るしかありませんでした。

 バルでもプロポーズするまで五年も掛かったのに、その間何も出来なかったこの男はどうしようもないですよね。


---


 その後、結婚式の日取りが決まり、プロポーズをした日から約一ヶ月半後になりました。

 教会の都合、ファビオ君らの学校が休みの日、パウジーニ伯爵も出席するので、調整をしてその日になったのです。

 アレッツォ唯一の小さな教会は、なんとサリ教。

 サリ様が主神の多神教で私まで神々の一員になっており、天界第六ブロック第二管理部の女神たちがサリ教の神なんです。

 他の星では一神教になってるところもありますが、ここは多神教なんですね。

 サリ様は愛の女神、わたくしディナは何故か子宝の女神なんです。

 わたくし、子供もいなければ男神の相手もいないんですよ?

 拝まれても御利益があるかわかりませんけれど、元も子もないので人間たちには黙っていることにしてます。


 結婚披露パーティーについては、初めはゴッフレード討伐のこともあってパウジーニ伯爵の厚意により屋敷で行おうという話がありましたが、招待客が街の住民中心なので貴族の堅苦しい様式は遠慮することにしました。

 よって、いつものようにラ・カルボナーラにて二人が料理を振る舞うことになりました。

 お店が狭いのでパーティーは三回に分けて。

 もしパーティの三日前までに魔物を狩ることが出来たらその肉を出すそうなので、魔物が見つかると良いですね。


 お店と住居が一緒なので新居を構えるわけにもいかず、またナリさんの部屋が狭く二人一緒の部屋にするのも難しいので、バルが伯爵家から借りている家はそのままにすることにしました。

 バルにしかわからない理由として、ナリさんのアノ声が大きいのをバルが気にして子供たち聞かれないように借家を残すのだとか。うぷぷぷっ


---


 結婚式の日が迫る、一ヶ月余り経ったある日のこと。

 バルとビーチェは農家から魔物が出没したとの情報で討伐へ。

 ファビオ君とジーノは学校へ行っており、ナリさんはお店で一人仕込みをしていました。


(――さっきから何だか気持ち悪いわ……)


「ううう……」


 ナリさんは口を塞ぎながら急いで店の一階にある洗面台へ行き、戻してしまいました。

 具合が悪い…… いえ、これはもしや?


(あれからバルと二回しか愛し合ってないのに、まさか最初の…… でも期間を考えると辻褄が合うわ。お医者さんに診てもらいましょう……)


 それからナリさんは街の小さな病院へ行って、以前から世話になっているオバちゃん先生に診てもらうと……


「アンナリーザさん、ご懐妊かいにんよ。おめでとうございます。新しい旦那様とのお子様、楽しみね。うふふ」


「そうでしたか…… ありがとうございます」


「次は十日後ぐらいにいらっしゃい。ファビオ君の時からもう十二年が過ぎてるのね。早いわあ…… 三人目だからわかってると思うけれど、お店の仕事でもあまり激しい動きは控えてね」


「はい、わかりました。お世話になります」


 大当たりだったようです。

 その帰り道、ナリさんはこう思ってました。


(いつかバルとの子が出来るかも知れないと思っていたけれど、この歳になって最初のアレで妊娠するなんて…… 何だか恥ずかしいわ。みんなにどう話しましょう……)


 ちょっと困っているようですね。

 プロポーズを公表したタイミングと同じなので、バレバレですものね。

 それからナリさんはお店で仕込みの続きをして、皆の帰りを待ちました。


---


 夕方になる前にビーチェが一人、先に帰ってきたようです。

 ニコニコ上機嫌ですから何か良いことがあったんでしょうか。


「ただいまー! お母さんお母さん! 大猟たいりょうだよおお!!」


「おかえりビーチェ。何がたくさん捕れたの?」


「ジャイアントボア一体と、ソーンラビットは十体も捕れたんだあ!」


「まあそうなの!? すごいわねえ」


「それで今バルがペトルッチのおっちゃんとこへ持って行ってねえ、解体をしてもらってるとこだよ。たぶんドナトーニの肉屋へも持って行くから遅くなるって!」


「わかったわ。うふふ」


 ビーチェが帰宅するなり、元気に大猟たいりょうの報告をナリさんにしました。

 あら、ファビオ君も学校から帰ってきたようですよ。


「お母さんただいまあ!」


「おかえりファビオ」


 彼がナリさんに挨拶をすると、先に帰っていたビーチェがいるのに気が付きました。

 いつもニコニコ可愛いわねえ。

 こんな純粋な子の将来は教会の神父が似合ってそう。


「あれ? お姉ちゃん早いね! ニコッ」


「うん! 魔物がたくさん捕れたんだ! これで結婚パーティーの肉は十分確保出来たから安心安心!」


「そうなんだ! 良かったねお姉ちゃん! ニコッ」


「それじゃあお店の準備をするから支度しよっか!」


「うん!」


 姉弟揃って、お店の準備の前に着替えたりシャワー浴びたりするのに階段を駆け上がって自分の部屋へ行ってしまいました。


(――赤ちゃんが出来たのって言いそびれちゃったわ。また後にしましょ)


---


 約一時間後、一旦自宅で着替えてからバルが店へ戻ってきました。

 

「ただいまナリさん! いやあ大猟大猟!」


「おかえりバル。ビーチェから聞いたわ」


「そうなんだ! パーティーで使う肉がこれで間に合うどころか、隣町まで売るほどありそうでね。ドナトーニのおやっさんがそういう販売ルートを持ってるから残らず買い取ってもらえそうだよ! これで当分の結婚生活資金は潤沢にあるぞう! ハッハッハッ!」


「そうなのね。良かったわ うふふ」


 その後も仕込み中にバルはベラベラと狩猟の様子をナリさんとファビオ君も含めて英雄譚のように語り、ナリさんは妊娠の報告をするタイミングを作ることが出来ませんでした。

 ナリさんは大人しくてあまりおしゃべりが得意な女性ではありませんから、なかなか話に割って入ることも難しいんですよ。

 バルももうちょっとナリさんに気遣って欲しいんですが、大猟たいりょうだったのが余っ程嬉しかったんでしょうね。

 そうしているうちに開店時間になってしまい、閉店するまで話す機会が無くなってしまいました。


---


 ――閉店後。

 ウスルラはほぼ毎日ラ・カルボナーラで食事をしていますが、時々閉店後も席に座ってのんびりと酔いを覚ましてから帰っています。

 今晩もそう言う日で、ナリさんもあのことをちょっと話しづらそうでした。


「ウスルラ、掃除の邪魔になるから早く帰れよな」


「あーごめんごめん。もうちょっと酔いが覚めたら帰るからさ。ハッハー」


「まあまあビーチェ、休ませてあげなさい」


「はーい」


 ビーチェはホウキで掃除をしていて実際ウルスラが邪魔だったのですが、ナリさんはそれを許しています。

 何せ毎日飲み食いしてお金もきちんと払う上得意様で、バルの旧友ということもあってあまり無碍(むげ)な扱いは出来ませんから。

 そのウルスラは呂律ろれつが回らないほどではないですがほぼ泥酔状態で、ショートパンツ姿で脚を組んでドテッと椅子に座ってました。

 どうやら、ファビオ君にパンチラを見せるのは教育に良くないとバルに言われて、ショートパンツを履くことが多くなったようです。

 当のファビオ君は、母と姉の裸や下着姿はいつも見ていることなので、ウスルラに対してもそんな感覚になっているので気にしていないみたいです。


「ねえナリさん。ずっと元気無かったけれど身体の調子悪いの?」


「ナ、ナリさんそうだったのか!? 気づかないでごめん……」


「ええ!? お母さん大丈夫?」


「早くあたしに言ってくれれば良かったのに……」


 ナリさんの様子が少し変なのを何故か酔っ払いのウルスラだけが気づいていて、他の三人は言われるまでわからなかったようです。

 超上級魔法師はそういうことにも敏感なんでしょうかね。


「ええ、いいえ。具合は悪くないの。あの…… 大事なことを話しそびれて、それで――」


「ああ。じゃあ私は席を外そっか」


 ウルスラはヨロッと立ち上がろうとしましたが……


「無理しないで。ウルスラさんも聞いてもらってていですから」


 ナリさんはむしろホッとして、気を遣ってくれたウルスラに出ていってもらうほど心は欠けていない優しい女性ですから、そのまま居てもらうことにしました。

 ナリさんはやや深い呼吸をして、特に二人の子供たちに向かって勇気を振り絞るように話そうとしています。


「あの、お母さんね。お腹の中に赤ちゃんがいるの」


「えええ!? そうなの!!??」


「あ…… そう―― だったんだ…… おめでとうお母さん」


 純粋無垢なファビオ君はその事実を知って笑顔で喜ぶが、大人の教育が済んでいるビーチェは喜ぶべきかやや気まずい笑みで受け止めました。

 バルが、大好きな自分の母親にナニをしたから赤ちゃんが出来たって思うと、この年頃の女の子ならば反応に困りますものね。


「ああのあのあのナナナナナリさんんん―― そそそれいつわわわかったの?」


 バルが一番動揺しています。

 ナリさんを妊娠させた張本人ですが、彼もまさかこんなに早く自分の子供が出来たなんて夢にも思いませんから。


「今日お医者さんに診てもらったわ。間違いなくあなたとの子よ。うふふ」


「――やった…… やった…… やったぞおおお!!」

(四十五歳で初めて本当の自分の子が生まれる! もしかしたら子供が出来ないと覚悟していたけれど、なんて嬉しい知らせなんだ!)


 バルはナリさんの両手を握り、半泣きになっています。

 ナリさんも顔を赤くして照れ、そんなバルを見つめていました。


「ありがとう、ありがとう…… ナリさん」


「バルったら……」


 二人ともとても幸せそうです。

 ファビオ君はそんな二人をニコニコと見守り、流石にビーチェも祝福されて生まれてくる弟か妹のことですから野暮な考えをせず微笑んでいました。


「おめでとう、二人とも」


「――ありがとうございます、ウルスラさん」


 ウルスラも優しい顔でお祝いの言葉を言いました。

 そこからまだ何かあるようです。


「そっかあ。これで私の子もお姉さんになるわけだ。うんうん」


 彼女の言葉で、場の空気が完全に固まってしまいました。

 ウルスラの子がお姉さんに? 意味がわからないんですけれど?


「――ウルスラ、今おまえが言ったことをもう一度聞かせて欲しい」


 バルは我に返ったように、落ち着いてウルスラに質問しました。

 彼に何か思い当たることがあるのでしょうか?


「えっ? バルと私の子がナリさんのお腹の子のお姉さんになるって意味だよ。あれ? 言ってなかったっけ?」


「――俺とウルスラの子がって…… はははは初耳なんだけれど……」


 さっきまで顔を赤くして動揺していたバルですが、今度は青くして動揺しています。

 バルとウルスラの子?? 私も初めて聞きましたよ?

 確かにバルの勇者パーティを解散してから私はずっとバルを見てきて、ウルスラのことは今までそれっきりでしたから――

 あら!? ナリさんが白目になってますよ!


「はははは……」


「おいナリさん! しっかり!」


 ナリさんが倒れそうだったのでバルが後ろから支えています。

 ビーチェはバルをさげすんだ目でこう言いました。


「バル最低だね。お母さんという人がいながらウルスラと浮気してたなんて」


「いやいや、俺は五年前からナリさんひと筋なんだぞ!」

(娼館は行ったけれど……)


「ウルスラ! 子供は何歳になってるんだ?」


「もう二十四歳になるよ。あっ 初めてここへ来たとき言っておこうと思ったけれど、昔のことだから忘れちゃってた。ごめんねー」


 ウルスラがあまりに軽く言うので皆が呆れてます。

 それで新事実が判明。バルとウルスラの間に二十四歳の娘がいることがわかりました。

 つまり約二十五年前にバルとウルスラにナニがあって生まれた子なんですよ。

 その頃はバルが二十歳で、大魔王ゼクセティスを倒した時!


「二十四歳…… 俺の娘が……」


「バル…… それならわかりました。ウルスラさんが前妻でその時のお子さんってことでいいんですよね?」


「いや、ウルスラとは若いときにそういうことがあったけれど、結婚はしていないよ。子供がいるなんて今知ったんだ。信じてくれるかなあ? トホホ……」


「二十四歳ってあたしより年上じゃん! ってことは、あたしにお義姉さんが出来たってことなの!?」


「そういうこと。バルが二十歳の時だっけ? お互い旅立つ別れの前日、最後の想い出にとあの夜に私が誘ったのよ。あああ素敵だったわあぁぁ。まさかその時のアレが大当たりしちゃってねえ。わかった時はもうバルと二度と会えないかと思ってたけれど…… フフフ」


「お、おい! そんな生々しいこと言うなよ…… そうか、アノ時の……」


 ナリさんはまだ半分呆れていましたが、ナリさん自身も一応婚前交渉で出来た子なのでバルとウルスラを責めることは出来ませんでした。

 ナリさん自身が慣れ親しんだ二人がずっと前に愛し合って出来た子で、それからバルはウルスラとは性交渉が無いのならば仕方が無いと思うのでありました。


「ビーチェには見せたけど、バルの二十歳の頃の映像を見せてあげよっか」


 ウルスラは手の平を上にせず、横に向けると店内ホールに若いバルの等身大3Dホログラムがボワッと現しました。

 前に伯爵家の書斎で出力したものと同じで、気功波を出そうとしているポーズです。


「うおっ ルチアんとこで見たのよりデカく映ってる!」


「おまえいつの間にこんなもん撮ったんだよ……」


「バル格好いい!」


「そうだろうそうだろうファビオ。ナリさんはどう?」


「とても素敵だと思います…… ポッ」


「ナリさんにそう言ってもらえると嬉しいよ。クゥゥゥ!」


 二十歳のバル、ファビオ君とナリさんには好評のようですね。

 ナリさんはまた顔を赤くして照れており、バルは褒めてもらえて喜びをガッツポーズで表しています。


「この時のバルはとってもイケてたのになあ。今は…… チラッ」


「今はってなんだよ…… チッ」


「それじゃあ次は、バルと私の子よ」


 ウルスラはサラッとおっさんバルをけなした後、二十歳のバルの映像を消して新たに映像を同じように等身大で出しました。


「わっ ちっちゃいウルスラじゃん!」


「可愛い!!」


「こ、これが俺の娘か…… 名前は何て付けたんだ?」


「ヴァルプリ(Valpuri)よ。四歳の時かな。他にも写真はあるんだけれど、頭の中整理してなくてすぐ出てくるのはお気に入りのコレしか出てこないんだ」


「ヴァルプリか……」


 その子の姿は本当にウルスラが子供の時のような姿で、緑色がかった銀髪のくせ毛で長さは肩まで、薄い緑色の瞳も同じの美人幼女です。

 白いワンピースがとても似合っていて可愛いですね。


「でさあ。バルの名前に似てるんだけれど、やっぱりそういうことなの?」


「ええ。バルの名前をちょっともらったわ。バルのことをずっと忘れないようにね。まさか再会出来るとは思ってなかったけれど」


「ふぅん、お熱いねえ。今どこにいんの?」


「カーマネン国の里で、私の息子夫婦と一緒に住んでるよ」


「え!? おまえそれも初耳だぞ!? 結婚してたのかよ!」


 ビーチェの軽い質問で、またウルスラの新事実がわかってしまいました。

 この女、あんまり自分のことをしゃべらないですからね。


「ずっと昔に死んだ、前の旦那との子よ。息子はもう五百歳を超えてるわ」


「そうだったのか…… すごいな、ロッカ族って……」


 ウルスラの種族、ロッカ族の長寿命に皆がポカンとして聞いています。

 彼女は現在七百四十六歳ですから、二百歳以上になって産んだ子というのも凄い話ですね。


「さっ 酔いが覚めたし私帰るわ。あっ その前に…… ナリさんちょっと来て」


 ウルスラは店の隅にナリさんだけを呼んで何かを見せようとしています。


「ウルスラ! 大事なナリさんにいらねーことするんじゃねえぞ!」


「大丈夫だって。きっとナリさん大喜びだよ。フフフ……」


 ウルスラがちょっと悪い笑いをしているのでバルは不安でしたが、片付けが進まないので放っておくことにしました。

 ウスルラとナリさんは店の隅で背中を向けて、コソコソ何かやってますよ。


(ナリさんに、二十歳のバルの取って置き映像を見せてあげる。同じ男を愛していた女としてこれを共有する義務があるわ)

(な…… なんでしょう?)

(じゃーん、これよ)


 ウルスラの手の平の上には、すっぽんぽんのバルの3D映像!?

 わっ 全部丸見えじゃないですか!

 二十歳だったバルの全裸をナリさんに見せていますぅぅ!


(は、はわわわわ…… なんてモノを……)

(これ、宿でバルがシャワーを浴びてる時にこっそり撮ったの。気持ち良さそうな顔をしてるでしょ。うぷぷっ)

(はぅぅ…… ドキドキドキ……)


 ナリさん、目を塞ぐどころか見開いて、肝心な所までバッチリ見ています。

 案外むっつりスケベだったんですね。

 しかし若いだけあって、なんてご立派なこと。ハァハァ……


「さてと。今度こそ帰るね。またあしたー!」


 ナリさんを店の隅に置いたままウルスラは帰って行きました。

 それから十数秒固まっていた後にナリさんは片付けに戻りましたが、顔は真っ赤になったままです。


「ねえお母さん、顔真っ赤だけど大丈夫? あたしたちで全部片付けるよ?」


「だだ大丈夫よ」


 ナリさんはそう言いながらバルをチラッと見たら、ますます顔が赤くなっていました。


「ごめんなさい。やっぱり先に休ませてもらうわね」


「本当に大丈夫? 俺が付いていこうか?」


「あいや、一人で行けますから。おやすみなさい……」


「あ、ああ…… おやすみ……」


「お母さんおやすみ!」


「おやすみー!」


 ナリさんは家族におやすみの挨拶をしてから自分の部屋へ戻り、着替えてからすぐに布団を被ってしまいました。

 今日はナリさんにとっていろいろ衝撃的な日でしたから、きっと疲れたんでしょうね。


(はわわわわ…… 最初とこの前もあまりよく見ていなかったけれど、バルってあんなに大きかったのね…… あの人性欲強そうだし、私この先大丈夫かしら……)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る